元公安警察官は見た かつて「ブルガリア」も日本で諜報活動を行っていたという意外な過去

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ソ連のスパイと同じ行動

 日本でもブルガリア大使館のスパイが摘発されている。1984年夏のことだ。

「スパイ活動を行っていたのは、その3年ほど前に赴任したポピバノフ二等書記官です。彼は科学技術担当で、表向きは日本の科学技術産業を本国に誘致、日本の科学技術庁と本国の科学技術庁をつなげる役目を担っていました」

 ところが実際は、ソ連のスパイのような活動をしていた。

「電子機器をテーマにしたシンポジウムに積極的に参加していました。また、ハイテク企業の幹部たちと頻繁に会っていたのです」

 公安部外事1課は、ポピバノフを1983年からマークし始めた。

「彼は、ハイテク産業の複数の企業の社員と会食を重ねていました。外事1課が確認しただけで、1年間で十数回にも及んでいます」

 どんな情報を入手していたのか。

「電子機器などの製品の生産作業工程を記載した技術者向け社内報です。技術者が見れば、どういう風に製品が出来上がっていくか、その作業工程がわかるようになっています。勿論、社外秘です」

 このままでは、企業の機密情報が漏れてしまうと危機感を抱いた外事1課は、企業の社員に背任行為を持ちかけた容疑で摘発に踏み切った。

「外務省を通じて、ポピバノフにも出頭要請をしたところ、数日後に緊急帰国しました。ブルガリア外交官の摘発はこの1件だけでしたね」

 ヨーグルトの国の意外な過去――。

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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