元公安警察官は見た 北方領土周辺で密漁した「レポ船」は旧ソ連に何を提供していたか

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旧ソ連崩壊で終息

「レポ船が国境警備隊と接触する時は、船長が一人で応対します。『おまえたちに責任を負わせたくない』と言って、他の乗組員は船倉にいさせたといいます。漁協関係者が北海道警に通報し、検挙されたレポ船は6隻です。しかし、これは氷山の一角に過ぎないでしょう」

 もっとも、道警に検挙されても、罰則は軽いという。

「検挙しても、国外で操業したため、検疫法違反を問われるだけです。また、漁獲高を申告しなかったという容疑で漁業法違反になることもあります。いずれにしても、5万円とか10万円くらいの罰金なので、たいしたことはありません」

 北方領土周辺海域は、カニやウニが豊富に獲れるという。

「ロシア人は、ほとんどカニを食べないので、周辺海域にはカニが豊富にあります。日本では高級食材ですから、漁が出来ればかなりの儲けになります。道警に検挙されてもいいから、レポ船になって儲けたいという船主はけっこういたのではないでしょうか」

 レポ船が最後に検挙されたのは1991年11月、第65秀栄丸だった。船長は、旧ソ連に右翼の情報やパソコンを提供し、1992年2月、漁業調整規則違反で懲役5月、執行猶予4年、罰金10万円の判決が下っている。

「レポ船がなくなったのは、1991年12月に旧ソ連が崩壊したからです。国内がゴタゴタし始め、レポ船どころではなくなったのでしょう」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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