韓国は猿芝居外交のあげく四面楚歌に… 「文在寅」退任でも日韓関係は修復せず

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保守政権に戻っても従中

――3月の大統領選挙で保守が政権を取れば米韓同盟は修復しますか。

鈴置:保守政権になっても米韓同盟修復は難しい。保守政党「国民の力」の大統領候補、尹錫悦(ユン・ソルヨル)氏はQuadに関し「傘下のワクチンなどのワーキング・グループに加わりつつ、追って正式な加盟を模索する」との発言に留めています。「参加」と明確に公約すれば、中国から警告を受けるのは確実です。そうなれば票も逃げるでしょう。その程度の覚悟ですから、大統領に当選してもQuadに加わる可能性は低い。

 日韓関係も保守政権に戻ったからといって改善に向かうわけではありません。文在寅政権が対日関係を悪化させた要因は2つあります。まず、高まるナショナリズムへの呼応です。21世紀に入ってからの韓国人は「日本、何するものぞ」と考え、「日本よりも上の我が国」を実感したがっています。

 それに応えるには日韓慰安婦合意や、日韓国交正常化の際に結んだ日韓基本条約など、日本との約束を踏みにじって見せるのが一番です。保守政権に代わっても、韓国のナショナリズムが収まるわけではありません。何らかの「卑日」材料を国民に提供する必要に迫られます。

「日本との関係が悪化すれば米国との関係が悪くなる」と心配する保守派もいますが、ただでさえ、親日派と非難されてきた保守ですから対日強硬姿勢を完全に転換はできない。

 結局、米国に「親米保守政権に戻ったのだから韓日対立の際は韓国側に立ってくれ」と頼み込み、日本に妥協を迫るしかありません。一方、日本の保守の間には「岸田文雄政権は中国と韓国に弱腰」との警戒感が強まっていますから、妥協を引き出すのは安倍晋三政権や菅義偉政権の時より却って難しいかもしれません。

 日韓関係が悪化した2つ目の要因は、韓国の従中です。対中包囲網に加われと命じる米国に、韓国人が使いたがるのが「歴史問題の残る日本とは組めない」との言い訳です。

 尹錫悦政権になっても対中包囲網に加わる覚悟は固まらない。となると、韓国はこの言い訳を使い続けることになります。そもそも、これを開発したのは左派ではなく、保守中の保守とされた朴槿恵(パク・クネ)政権です。

国の格が上がった

――文在寅政権が韓国の外交を無茶苦茶にしましたね。

鈴置:確たる信念もなく、その場しのぎであっちへフラフラ、こっちへフラフラ。文在寅大統領は中国に行けば、中国と運命を共にすると言ってみせる。米国に行けば米国と共闘するようなことを言う。しかし、米中いずれとの約束も行動に移さない。日本や北朝鮮に対しても食い逃げばかりしている。貰うものは貰って、後は平気で約束を破る。

 当然、米国からも中国からも、日本や北朝鮮からも舌先三寸の指導者と見切られて相手にされなくなりました。四面楚歌は自業自得なのです。韓国人が一番気にする「国の格」を完全に貶めました。

 もっともご本人はまだ、国の格が上がったと主張しています。1月21日、UAE、サウジアラビア、エジプトの中東3国歴訪を終えた文在寅大統領はSNSで「大韓民国の上昇した国格はすべて国民のおかげです」と発信しました。中東で自分が大事にされたから、ということのようです。

中央日報は「中東訪問終えた文大統領『上昇した国格、すべて国民のおかげ』」(1月22日、日本語版)で、これを無批判に報じました。

 韓国人は国威発揚に弱い。ことに国民の努力の結果、と花を持たせてもらえれば、宣伝にすぐ乗ってしまう。韓国の外交迷走が続くと考えるのは、こんなところにも理由があります。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮編集部

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