「梨田の呪い」に「伊原の呪い」…日本プロ野球界がざわついた“珍伝説”

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 呪いや迷信は科学的根拠がないにもかかわらず、論理的に説明できない悪い出来事が相次ぐと、“○○の呪い”と囁かれるのが、ほぼお約束。プロ野球界もまた然りである。【久保田龍雄/ライター】

24年ぶりに“奇跡の生還”

 阪神ファンの間で今でも話題に上るのが、“カーネル・サンダースの呪い”だ。
話は37年前の1985年10月16日、阪神が21年ぶりのリーグ優勝を実現した日まで遡る。

 V決定直後、大阪の街は沸きに沸き、一部の虎党が熱狂のあまり、暴徒と化した。彼らはケンタッキー・フライド・チキン道頓堀店に設置してあったカーネル・サンダースの人形を、優勝に大きく貢献した主砲のランディ・バースに似ていると騒ぎだし、店員の制止を振り切って担ぎ出すと、胴上げの末、「六甲おろし」の大合唱とともに道頓堀川に投げ込んでしまった。

 川底に沈んだ人形は行方不明となり、以来、阪神は17年連続で優勝を逃したばかりでなく、87年からの15年間で最下位10度という長い低迷期に突入する。いつしか「チーム弱体化の原因は、カーネルの呪いでは?」の声が上がり、大阪市が年に一度の川底清掃作業で捜索を続けたが、発見は困難を極めた。

 だが、2009年3月10日夕方、遊歩道整備で川底の不発弾の有無を調べていたダイバーが、投げ込み現場から200メートル下流で人形の上半身を発見。さらに翌11日に下半身が発見され、カーネルは24年ぶりに“奇跡の生還”をはたした。

 修復された人形は、“幸運の象徴”として、ケンタッキー・フライド・チキンのオフィスに設置されているという。昨季はゲーム差なしのわずか5厘差で優勝を逃した阪神。今季は1985年以来の日本一を達成して、“呪い”のイメージを完全に払拭したいところだ。

「唯一正しいのは、監督の年俸」

 ロッテといえば、98年にNPBワーストの18連敗を記録した際に厄払いと招福のお祓いを受けたことでも知られるが、2004年にも伊原春樹監督率いるオリックスに開幕からズルズル8連敗。しかも、オリックス戦に限り、井上純、サブロー、李承燁、原井和也、ベニー・アグバヤニが相次いで負傷するという悪夢のようなアクシデントが続いたことから、スポーツ紙に“伊原の呪い”の見出しが躍った。

 きっかけとされる事件が起きたのは、3月16日のオープン戦。6回の投手交代の場面で、ロッテバッテリーの打ち合わせが長引いたことに苛立った伊原監督が「早うせえ!ハリー・アップ!」と英語まじりにボビー・バレンタイン監督を挑発したのが始まりだった。

 これに対し、バレンタイン監督も三塁コーチャーズボックスに立つ伊原監督を「ゲット・アウト(出ていけ)」と罵り、舌戦がエスカレート。試合後も両者はマスコミを通じて“仁義なきバトル”を繰り広げ、バレンタイン監督は一夜明けても「相手が言ってることで唯一正しいのは、監督の年俸(で負けている)のことだけだ。それは私のキャリアの中で、彼より800勝ぐらい多めに勝っているからなんだよ」と“口撃”を続けていた。

 こんな経緯があって、因縁のオリックスに8連敗し、主力が次々にリタイアしたのだから、“呪い”と受け止められるのも無理はなかった。その後、ロッテは5月21日のオリックス戦で4対2と勝利し、“9度目の正直”で長いトンネルを脱出。約2ヵ月にわたる呪縛からようやく解き放たれた。

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