「梨田の呪い」に「伊原の呪い」…日本プロ野球界がざわついた“珍伝説”

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皮肉な“逆転現象”

 最後は近鉄・日本ハム時代の梨田昌孝監督にまつわる“呪い”を紹介する。ドラフトの競合抽選で通算0勝5敗とさっぱりくじ運に恵まれなかった梨田監督は、近鉄監督就任直後の99年ドラフトで、河内貴哉(広島)を外したのことが、ケチのつき始め。02年にも高井雄平(ヤクルト)を外した。また、日本ハム時代の07年の大学・社会人ドラフトでは、大場翔太(ソフトバンク)の抽選に敗れたあと、外れ1位でロッテと競合した服部泰卓も外した。さらに、09年にも菊池雄星(現マリナーズ)を西武にさらわれている。

 そして、この5選手は、10年のシーズン終了時点でいずれも結果を出していなかったことから、“くじ引きの呪い”(梨田の呪い)と呼ばれた。

 梨田監督自身も翌11年2月の沖縄キャンプ中に「僕が外した選手は、プロフェッショナルでほとんど活躍してない」のブラックジョークを披露するほど。わざわざネガティブな話題を持ち出して、何が言いたかったのかというと、実は前年のドラフトで4球団が競合した斎藤佑樹を日本ハムが引き当てたので(くじを引いたのは藤井純一球団社長)、「“難”を免れた斎藤は、プロで活躍するかも」とアピールしたかったようだ。

 だが、斎藤は故障で通算15勝と伸び悩み、昨季限りで引退。一方、5人の中で、高井は打者転向後、「雄平」の登録名でブレイクし、2年目から1軍定着した菊池もNPB通算73勝を記録という皮肉な“逆転現象”も起きた。ひょっとすると、今になって「あんなこと言うんじゃなかった」と後悔しているかもしれない。

 ちなみに、梨田氏は、現役時代にも自宅建設予定地から旧石器時代の日本最古の住居跡「はさみ山遺跡梨田地点」が発見されるという“世紀の珍事”に遭遇。何かと話題に事欠かないのも、ある意味“持っている”と言えるだろう。
 
 そして、今季のプロ野球界でも、新たな“珍伝説”が生まれるのだろうか。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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