中国が幸せの国「ブータン」を侵略 40年の国境画定交渉を無視するあり得ない手口とは

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インドの“反撃”は

 国境地域などで挑発行為を続ける中国を、インドも黙ってみているわけではない。従来の防御中心の戦略から転換し、攻撃能力を強化し始めている。インド側の攻撃能力の一翼を担うのは陸軍第17軍団だ(1月6日付Wedge)。9万人を擁する大規模部隊であり、インド空軍の支援を受けて機動的に部隊を展開することができる。中国の重要インフラを効果的に攻撃できる能力を持つ第17軍団は、昨年から作戦実行可能な状態になったとされている。

「インドは日米豪印による首脳会合「クアッド」に加盟したことで中国に対して今後は強気の態度で臨むのではないか」と指摘する専門家もいる。

「中国が一方的に挑発し、インドがこれに受け身で対応する」というこれまでの構図が崩れつつあるのだ。

 日本では中国の台湾への軍事侵攻への懸念が強まっているが、米国は中国による台湾の統一を拒否する姿勢を鮮明にしつつある。自らの過ちで台湾侵攻のコストを極めて高価にしてしまった中国が「米軍のプレゼンスが低い南アジアなら国威発揚のための領土の拡張が比較的容易に行うことができる」と考えたとしても不思議ではない。

 その一環がブータンとの国境沿いへの入植地建設かもしれないが、ブータンの背後に控えるインドは中国に次ぐ世界第3位の軍事大国だ。1962年の中国との大規模な国境紛争に大敗したことを機に核兵器を開発したことも忘れてはならない。

 中国がこれまでと同様、南アジアで傍若無人な振る舞いを続ければ、捲土重来を期すインドと全面的な軍事衝突につながってしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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