経済力の学力格差を乗り越える「読書」の力とは 「経済格差」「遺伝」より「本のある環境」が影響
まずは親が書物に親しむ
もし親自身に読書習慣が欠けている場合には、自らが書物に親しむように努力することも必要だろう。子どもは知らず知らずのうちに親をまねるものであり、そうしたモデリング効果の存在は心理学でも実証済みである。ゆえに、子どもに要求するよりも、親自身が身をもって示すほうが効果的であり、それこそが世代間伝達の重要な一側面ともいえる。子どもに絵本を与える場合も、絵本を身のまわりに置いておくのはもちろんのこと、ときには一緒に絵本を見たり、読んであげたり、描かれている人物や動物を指差しながら会話を楽しんだりするのも、絵本への関心を高めるのに効果的だろう。
親自身がこのようなことを踏まえておけば、たとえ社会経済的地位や学歴にハンディがあっても、世代間伝達の環境要因を用いて子どもの学力向上を支援することができる。格差社会を乗り越えるためにいかに読書が効力を持つかをわかってもらえただろうか。
もちろん子ども自身の持って生まれた個性もあるから、いくら環境づくりに腐心したところで、空振りに終わることもある。たとえ無駄に終わるかもしれないにしても、子どもを持ったからには、その子の将来の可能性を広げるためにできるだけのことをするのは親としての義務であろう。しかも、読書が効果を発揮する可能性が大きいことは明らかなのだから。
[5/5ページ]