経済力の学力格差を乗り越える「読書」の力とは 「経済格差」「遺伝」より「本のある環境」が影響

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 東大生の親の6割以上が年収950万円以上とか。経済力の違いが子どもの学力格差につながるといわれている現代社会。だが、裕福でなくても諦めるのはまだ早い。ちょっとした読書習慣を持つか否かが、子どもたちの将来を大きく変えることが分かってきたのだ。【榎本博明/心理学者】

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 裕福な家庭の子どもほど有利な学歴を手に入れ、高収入を得るようになるというのは、以前からしばしば指摘されてきたことだ。お金があれば子どもにさまざまな教育機会を与えることができる。それにより経済力に裏打ちされた学力格差が生まれる。実際、学力格差の背後に経済格差が存在することを示唆する各種データが得られている。

 海外と比べて経済格差が小さいとされていた日本も、グローバル化の影響を受け、社会階層による経済力の差が急速に拡大してきている。それと並行して、子どもたちの学力格差も拡大しつつある。そうなると、子どもの学力は親の経済力しだいであり、裕福な階層でないと子どもの学力や将来の経済力に期待できないということになってしまう。そうして「親ガチャ」などという言葉まで生まれ、若者たちの間に諦めムードが漂っている。どんな親のもとに生まれるかで人生が決まってしまうというわけだ。

 さらには、このところのAI(人工知能)の急激な発達により、今の幼い子どもたちが社会に出る頃には、多くの仕事がAIに奪われ、よほど優秀な人物以外は仕事に就けなくなるのではないかといった不安が子育て世代に広がっている。

中学生の半数が教科書の内容を理解できていない

 だが、親も子も諦める必要はない。たとえ経済的に恵まれていなくても学力格差を乗り越える方法がある。

 まずは学力格差の現実から見ていくことにしたい。

 中学生の半数が教科書の内容を理解できていないという報告が衝撃を与えたのは数年前のことであった。日本語で書かれた教科書を読んでも意味がわからないというのだ。これではどの教科内容も身に付かず、学力向上は望めない。その際に問題になるのが読解力だ。日本で暮らすかぎり、日本語の読解力を高めないと学力が付くことは期待できない。そこで読解力を鍛えることが急務となっている。国語の授業改革もその線に沿って進められているとみてよいだろう。

 2022年度から施行される高等学校学習指導要領によれば、国語の授業の選択科目は従来の「現代文A」「現代文B」が解体され、文学中心に学ぶ「文学国語」と実用文も含めて論理的な文章を学ぶ「論理国語」のいずれかを選択することになる。それに対応して、文学を中心とした教科書と実用文を多く盛り込んだ教科書の製作が進められている。どちらを選ぶかは、学校が決めることになる。

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