「林芳正」外相の選挙を巡り「山口県副知事」を書類送検 背後に“県政のドン”

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家族も後援会員にするスキーム

 では今回、県庁内で公務員の「地位」を「利用」した後援会勧誘スキームはどのようなものだったのか。

「使われるのは、政治家が作っている後援会加入のリーフレットです」

 と、県庁OBが語る。

「数百枚、数千枚を議員サイドから県庁サイドに納め、副知事、部次長、副課長という実務を担う指揮系統を通じ、現場の職員に配っていく。そして、妻や両親など家族にも記入してもらい、その紙を再び副知事まで上げていくのです。議員からすると職員の家族も含め後援会員になってくれれば、後援会はがきを送るなどして、票に直結させることができます」

 公選法に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授が言う。

「今回のように副知事から現場に話が下りているのなら、人事や評価を行う人物から勧誘されていることになります。断りづらい状況が想定できますので、『地位利用』にあたる可能性は高まるでしょう。違反した場合の罰則は2年以下の禁錮または30万円以下の罰金になります」

 村岡知事が1期目の当選を果たした8年ほど前から、こうした後援会勧誘が組織化されるようになったのだという。

恐怖政治

 県庁OBが続ける。

「自民党山口県連の実力者である柳居さんに知事は全く頭が上がらないのです。そもそも昔から山口県庁では首長選を含めた自民党候補の選挙の出陣式、決起集会で人が足りないときに職員に動員がかけられることは比較的行われてきました。自民党候補者の後援会に勧誘することもその一つ。そこへ自民党の推薦を受け、資金もスタッフも自民党におんぶにだっこの村岡知事が就くと、柳居さんの県庁に対する影響力が増していき、副知事を頂点としたより組織的な勧誘が行われるようになった。国政では解散のある衆院よりも選挙時期の決まっている参院で活発に行われていました。参院だと選挙半年前から後援会員が集められ、林さんも鞍替え前はお世話になっていた」

 庁内の人事でも柳居氏と知事の力関係が反映されていると語るのは、地元記者。

「とある出世頭だった部長は知事に近く、柳居さんらの意向で外郭団体に飛ばされたこともありました。“そんな人でも”と庁内に衝撃が走った。まさに恐怖政治が敷かれているのです」

 また、20年8月には、柳居議長の公用車としてトヨタの高級車「センチュリー」を県が2090万円で購入し、違法な公金支出だとして住民訴訟まで起きた。

 今回は林氏にとって初の衆院選。権勢を振るう柳居氏の意向をバックに通常より活発な勧誘活動が繰り広げられたのだ。

「県庁の職員約3500人のうち、約2割が山口3区に居住しています。家族も含めれば千人以上の後援会員は容易に集まります。人事を含め、こうした状況が野放しなのに、村岡知事は県庁を牛耳る柳居さんを恐れ、何も言えないのが実状なのです」(同)

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