年末年始の定番「警察24時」の光と影 視聴者には決して言えないテレビ局の事情

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過去には撮影した映像の押収も

 一方、TBS「最前線!――」は新味があった。取材班が警視庁の生活安全部特別捜査隊に張り付き、東京・秋葉原にある違法メイドカフェの摘発をルポした。

 メイドカフェは飲食店営業の許可を取れば開業できる。だが、メイドカフェの中にはキャバクラなどのように従業員が客の接待をする店もある。こちらはそのための営業の許可が必要となる。許可を得ずに客の接待をすると、風営法違反だ。生活安全部特別捜査隊が違反店をビシビシ摘発した。

 目新しかった。とはいえ、この番組も違法メイドカフェという捜査対象が違っただけ。生活安全部(課)が担当する風営法絡みの事件を各番組が取り上げることは珍しくない。やはり各局とも中身に大差はない。

 一方、市民が解決を切望する「八王子『スーパーナンペイ』殺害事件」(1995年)、「柴又・上智大生放火殺人事件」(1996年)、「世田谷一家殺害事件」(2000年)などの凶悪事件の捜査が映し出されることはない。

 捜査上の秘密を守るのが第一の理由だろうが、警察への24時間密着を看板に掲げる番組であるなら、凶悪事件にもカメラを向けるべきではないか。そこが視聴者の一番知りたいところのはずなのだから。遺族や関係者はもちろんそうだろう。市民からの情報も集まりやすくなるに違いない。

 2013年、鹿児島市でTBSの「警察24時」の取材班が警察官2人に密着していたところ、この2人が会社員男性(当時42)を死亡させてしまう事件があった。2人は業務上過失致死罪で有罪判決を受けた。

 警察官2人は「ケンカをしている」との通報を受け、鹿児島市内の繁華街へ向かった。取材班も一緒だった。そして警察官2人が会社員男性を路面に押さえつけたところ、男性は胸部などの圧迫による低酸素脳症で死亡した。

 取材班は事件の全容を撮影していた。ところが、この映像を鹿児島県警が押収してしまう。しかもTBSはそれに抗議しなかった。もちろん放送もしていない。

 TBSは押収までのプロセス、抗議しない理由も一切明かさなかった。遺族や遺族側弁護士は真相解明のカギを握る映像の公開を望んだが、実現しなかった。

 取材班は外部の制作会社のスタッフだった。番組をつくったのもそう。だが、諸々の責任や著作権がTBSにあったのは言うまでもない。

 各局の「警察24時」に協力する警察側は「マズイ映像を撮られたら、取り上げればいい」と考えているのだろうか。一方、民放側は「協力してもらっているのだから、言われたことは何でも聞く」とでも思っているのだろうか。万一、そうであるなら、警察の輝かしい部分ばかり観せられる視聴者側は見くびられている。

「警察24時」のパイオニアはテレ朝の「警視庁潜入24時!!」(1978年~)。牧歌的な時代で、テレ朝側は警察官たちに謝礼を出せない代わりに、六本木の旧社屋の庭で行われた花見に招待していた。

 放送枠は「水曜スペシャル」。売り物は「川口浩探検隊シリーズ」で、「警察24時」も看板だった。そもそもエンターテイメント番組としてスタートした訳であり、今もその尻尾が残っていると言わざるを得ない。

 模倣した他局も同じだが、そろそろ純粋なドキュメンタリーに宗旨替えすべきではないか。もう「警察24時」が生まれた44年前とは時代が違う。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮編集部

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