変わる「福岡」のラーメン事情 “非豚骨”の店の数が“豚骨”の店を上回る

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原点に立ち返って成功した「とら食堂」

『どさんこ』は福岡人に寄せることで成功した非豚骨系ラーメン。一方、福岡からあえて離すことで成功した店もある。再開発が進む六本松にある『中華そば とら食堂 福岡分店』だ。

 本店は福島県白河市にあり、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』でも取り上げられたことがある有名店。福岡発祥の豚骨ラーメンチェーン『一風堂』を運営する力の源カンパニーの河原成美社長が『とら食堂』と親交があり、福岡の人にもこのラーメンを食べてほしいと2016年に出店した。店主の和田響さんはもともと力の源カンパニーの社員だった。

「創業から1年たったくらいの頃から社員として関わっています。2020年の春に、力の源カンパニーが経営から離れることとなり、河原から『お前、本格的にやらないか』と言われ、現在は私が買い取って運営しています」(和田さん)

 店の一番人気は中華そば。こだわりの手打ち麺とコクがありながらすっきりと優しい醤油スープが美味しく、一滴も残さず飲み干してしまう。初めて食べたのに懐かしい。飽きがこず、何度でも通いたくなる味だ。

 ラーメン好きには知られた『とら食堂』とはいえ、豚骨王国の壁は厚く、最初は苦労もあった。

「豚骨以外のラーメンは福岡では珍しいので、1回は食べていただけるんですが、なかなかお客さんが定着しない。どんぶりのスープの残り方を見て、難しさを感じました。最初はきつかったです」(和田さん)

 福岡の人に合わせた味にするという手もあったが「それでは『とら食堂』の看板ではなくなってしまう」。より美味しいラーメンを作ろうと見直したのが材料だった。

「それまでは福島の『とら食堂』で使っている材料だけでなく、一部福岡で揃えられる材料を使っていましたが、味を見直す際に白河と同じものにしました。全部を白河のものにすると送料などコストはかかるんですが、材料を変えたことで味の角が取れてまろやかになりました。お客さんは正直で、そうするとスープを全部飲む人も増えたりと、徐々に反応が変わってきたんです」(和田さん)

 客だけでなく、店のスタッフの反応も変わった。それまではまかないでラーメンを食べるスタッフは少なかったが、材料を変えたことで「面白いもので、まかないを頼むスタッフも増えました」。福岡に寄せず、原点の味に立ち返ったことがターニングポイントになった。

「やっとここ最近、お客さんが付いてくれたなと感じています。だから、ここで気を抜いちゃいけないなと思っています」(和田さん)

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