動物園でイノシシを丸ごと餌にする取り組みが 肉食獣のストレス軽減に有効

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ストレスから生じる「常同行動」が改善

 残酷でグロテスク? とんでもない。同園では「動物福祉」の観点から屠体給餌を始めたと話す。動物のストレスを減らすなど、より動物福祉に配慮した飼育が模索されるなか屠体給餌の促進に取り組む「ワイルドミートズー」の西村直人理事がその意義を説く。

「動物福祉を考える際、動物本来の生活を参考にします。たとえば大型肉食獣なら、獲物を狩り、毛皮の内側の肉を骨から噛みちぎって食べる、というように野生下の動物は採食行動に多くの時間を費やしますが、現状、動物園の多くは小さく切った肉を与えるため食事は刺激や喜び、行動の多様さに乏しく数分で終わってしまいます。檻の中を動物が行ったり来たりし続ける“常同行動”は暇すぎるストレスから発現するといわれています。屠体給餌後は常同行動も改善されています」

 屠体は感染症対策のため頭部と内臓を除去し、低温殺菌・凍結処理したものを解凍して与えている。

「屠体給餌を続けると食べ方も上手になります。切り身しか与えていないと口だけ使って食べますが、前脚で餌を押さえて食いちぎるなど多様な動作ができるようになります」(同)

 屠体給餌の際は動物の生態に関する解説イベントも併せて行われるそうだ。

 害獣減に飼育動物のストレス軽減、来園者への教育にも役立つといいこと尽くめ。政府も妙な愛称選定に時間を費やすくらいなら、こちらにわずかでも予算を割いてあげてはどうなのか。

週刊新潮 2021年12月23日号掲載

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