バイデン政権は高インフレで早くもダメ出しされる可能性 カーター政権の悪夢が甦る

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労働市場も逼迫

 11月の米消費者物価指数(CPI)の前年同月比の上昇率は6.8%と約39年ぶりの高水準となっており、バイデン政権が直面する最大の政治課題はインフレ対策だと言っても過言ではない。米連邦準備制度理事会(FRB)も「インフレは一時的」との表現を撤回し、金融引き締めモードに舵を切ろうとしている。インフレ対応よりも雇用回復を重視してきた民主党議員からも「FRBは量的緩和縮小をもっと積極的に進めてほしい」との声が出る始末だ。

 これに対し、バイデン政権は「インフレの主な要因は新型コロナだ」と主張している。欧州を始め先進国の多くで米国ほどではないが、物価上昇が起きている。だが米国民はそうは見ていない。11月中旬に実施された世論調査によれば、62%の米国人が「国内のインフレはバイデン政権の政策に責任がある」と回答している。

 新型コロナのパンデミック以降、米国ではコロナ経済対策の給付金が3回にわたって支給された。トランプ前政権下で2回(1人当たり1200ドルと600ドル)、バイデン政権では2021年3月に民主党のみで成立させた「米国救済計画法」に基づき、1人当たり1400ドルが支給された。この追加給付金は当初は好評だったが、最近ではインフレを加速させる原因となったと見なされている。「需給ギャップを十分に精査せずに過大な景気刺激策を講じたことが災いした」との批判からだ。

 米国では労働市場も逼迫している。12月8日に発表された10月の米国の雇用動向調査によれば、就業者に占める離職者の割合は2.8%となり、2000年以来の過去最高を更新した。新型コロナを契機に働き手がより良い待遇を求め、自らの意思で職場を去っており、米国で「大退職時代」と呼ばれる現象が進行している。

 長年にわたる多額の貿易収支の赤字が示すとおり、米国では国内の供給力を上回る需要が常態化している。その上労働力不足が進み需給ギャップがさらに拡大すれば、カーター政権時代のような高インフレ時代(14%)に逆戻りする可能性が高まるだろう。

 失業率の悪化の影響が限られているのに対し、インフレ率の上昇は100%の国民に悪影響が及ぶ。米国の雇用情勢が絶好調でも賃上げを上回るインフレ率で経済全体に対する悲観論が広がっているゆえんだ。

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