ドン逮捕で開いた日大会見に文句なし 田中派の新理事長に浴びせた記者の質問に違和感

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「日本大学再生会議」が真っ先にすべきこと

 今回の事件が発覚した時、評議員のひとりがこのように言っていた。

「臨時評議員会を開いて理事長の解任を議題にしてほしいのだけれど、これを開くかどうかも理事長の判断なのです」

 加藤氏が、規則を遵守して行動する良識ある社会人であればあるほど、この規則の下で反旗を翻せなかった現実があることも、私たちは理解する必要がある。そしてまた、見方変えれば、いまこの瞬間、加藤学長兼理事長は実質的に田中前理事長と同じ独裁的な権限を持っている存在なのだ。そのことは誰よりも加藤氏自身が知っている。まさか、その異常な砂上の楼閣で加藤氏が第二の田中になろうとはしないだろう。世間からすれば当然と思われることだろうから、あえてそのような発言はしなかったけれど、暗にそれを宣言したのが10日の記者会見だったことも、私たちは理解すべきだろう。

 そのカラクリ事態を変革しなければ、第二、第三の田中理事長が登場する余地を残す。だから、具体的な指摘をすれば、「日本大学再生会議」が真っ先にすべきは、理事長独裁体制を可能にする学内規定の改定だ。それこそが根幹。その認識を持ち、遂行できる人材が「日本大学再生会議」の構成員に選ばれることが改革実現の肝になる。

感情的な非難は賢明ではない

 田中体制の中で学長に就任した加藤氏が、道義的、イメージ的に今後も理事長そして学長にとどまるのか。これは加藤氏が厳しく自問するところだろう。どの段階でけじめをつけるのか。私は、これまで述べた改革のキーポイントを痛いほど知る加藤氏をおいて改革の中心人物はいないと思うので、世間の感情的な非難で辞任に追いこまれるのは賢明でないと感じる。「日本大学再生会議」に道筋を示す役割は加藤氏が担うべきだろう。

 記者会見を見て、「田中前理事長に選ばれた加藤学長はすぐやめるべきだ」との指摘もある。だが、察しのいい読者はすでにお分かりと思うが、実情を痛いほど知っている加藤学長兼理事長には「すぐには絶対やめられない理由がある」のだ。理事長独裁が可能な規則がある限り「いまは誰にも渡せない」、その規定を変えるまでは「自分以外に任せられない」、それが加藤氏の切なる思いではないだろうか。

 日本大学とその付属校では、いまも多くの学生が学んでいる。教職員もいる。卒業生たちも大勢いる。この人たちの選択や経歴はいまさら変えることができない。日本最大級の学校法人が健全に再生することを心から願う。

小林信也(こばやし・のぶや)
1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。「ナンバー」編集部等を経て独立。『長島茂雄 夢をかなえたホームラン』『高校野球が危ない!』など著書多数。

デイリー新潮編集部

2021年12月12日掲載

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