「K防疫のまやかし」から韓国人は目覚めるか 幼いナショナリズムが生む国家の蹉跌

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「奈落の底」を放置するメディア

――いつも厳しく政府を攻撃する韓国紙が、過少計上を追及しないのは不思議です。

鈴置:そこがポイントです。冒頭に申し上げたように、保守系紙といえども「K防疫」神話をぶち壊す勇気はない。「本当は日本より韓国の方がコロナによる死亡者がはるかに多い」と今になって聞かされれば、韓国人は怒り狂うでしょう。

 さきほど、政府も病院も個人も「グル」と申し上げましたが、メディアも「一味」なのです。そして、ここに韓国の危うさがあると思うのです。

 韓国は失敗国家に向かって突き進んでいます。外交では米中二股を目指したあげく、米中双方からまともな国として扱われなくなりました。内政では左右対立が激化する余り、せっかく芽生えた民主政治が壊れ始めています。

 本来なら、メディアがこの危うい状況を国民に率直に説明して、奈落の底に落ちるのを食い止めるべきでしょう。ところがメディアの論調は極めて歯切れが悪い。

「韓国はすごいぞ!」と国民のナショナリズムに火を付けた結果、今さらそれを否定して国民から総スカンを食うわけにはいかなくなったのです。

 新規の陽性者が3日続けて7000人を超した12月10日。朝鮮日報の社説の見出しは「『K防疫』を誇る時は前に出る文、『K防疫』が危機の時は姿が見えぬ」(韓国語版)でした。

 大統領は口を極めてののしっても依然、K防疫は神聖な存在なのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮編集部

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