90歳でも「異性にモヤモヤッ」 周囲が明かす瀬戸内寂聴さんの逸話…生命力の秘訣とは
ビールの大ジョッキを一気飲み
日々を大切にすべきことも、繰り返し説いていた。
〈人間の一生は夢か幻のようにはかないもの。来年も生き続けるとは考えずに、今日を懸命に生きること〉
いまに一途(いちず)に向き合えば、過去や未来への執着からも自由になるかもしれない。
〈何ものも「自分のもの」ではない。若さも、名誉も、金も、家族も、いつかは失ってしまうはかないものである。そう自覚することで執着という煩悩から放たれることが出来るのである〉
だが、それは自分を捨てることではない。『老いも病も受け入れよう』から。
〈身なりをかまわないのは、自分で自分を見限ることです。老いてもきれいに、おしゃれして〉
〈煩悩から放たれる〉というのも、そうしてこそ自分自身を大切にできる、という説諭だったのではないだろうか。このような本人の意識もあっての結果だろう。
「最も強い印象は、とにかく若々しい人だったということです」
と述懐するのは、2004年に「情熱大陸」の制作に関わったのを機に、7~8本の番組で寂聴さんを取り上げたテレビディレクターの中村裕氏である。
「初対面のとき、先生は82歳でしたが、歩く速度がすごく速く、駅ビルのレストランで一服した際、ビールの大ジョッキを注文し、届くやいなや、一気に半分近く飲みほしたんです。活力の塊のような方でした」
その後、こんな逸話も。
「“よく食べますね”と言うと、“本当はビフテキが好きなの”と返されたのですが、その後、先生から苦情が。NHKの番組でビフテキを食べる場面を放映したら、“あなたをもてなすために肉料理を用意しただけなのに、お肉ばかり食べているように見られるのは心外です”と。でも、“やっぱり小説家はお肉を食べないとだめだ。毎日、少量でもお肉を食べていると長生きする”とおっしゃる。“先生、野菜も摂らないとダメですよ”とアドバイスすると、真顔で“なに言ってんの。肉でいいの!”。すごいなこの人、と」
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