日本シリーズ 32年前の巨人「香田勲男」…崖っぷちから流れを劇的に変えたヒーローたち

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 今年もプロ野球の頂上決戦・日本シリーズが始まった。先に4勝したチームが日本一になる短期決戦とあって、初戦から2連敗、3連敗を喫したチームは苦しくなる。だが、過去には、そんな劣勢から逆襲に転じ、「逆転日本一」を実現したチームもある。もうあとがない崖っぷちから、シリーズの流れを劇的に変えた“不屈の男たち”を振り返ってみよう。

熟睡のあまり寝坊

 第1戦から3連敗のあと、怒涛の4連勝で日本一になったのが、1989年の巨人である。キーマンとなったのは、第4戦で先発した香田勲男だった。斎藤雅樹、桑田真澄、槙原寛己に次ぐ“4番目の男”は、この日がプロ6年目でシリーズ初先発初登板だった。

 もう1敗もできない巨人は、“三本柱”のいずれかを先発させる背水の陣も予想されたが、藤田元司監督は「シリーズ前から第4戦の先発は香田と決めていた。必ずいい仕事をしてくれる」とローテーションを変えることはなかった。

 香田も「プレッシャー? 正直言ってありました。僕で負けたら終わりですからね」と言いながら、登板当日の朝、熟睡のあまり寝坊し、移動のバスに乗り遅れそうになる大物ぶりを見せた。

 試合でも香田は、大胆不敵な投球を披露する。初回1死から新井宏昌に安打を許したが、ブライアント、リベラの3、4番を連続三振。130キロ台の直球に70キロ台のスローカーブを織り交ぜて、ブンブン振り回してくる近鉄打線を翻弄し、被安打3の完封勝ち。「シリーズなんて、投げるだけでいいと思っていましたからね。本当に信じられない」と本人も目を丸くした。香田の緩急自在の投球をヒントに近鉄打線の攻略法を掴んだ巨人は、一気に逆襲に転じ、逆転日本一を実現する。

 シリーズ史に残る大逆転劇は、第3戦の試合後、近鉄・加藤哲郎の「巨人は(パ最下位の)ロッテより弱い」という発言報道に対し、巨人が奮起した結果とよくいわれる。だが、真にシリーズの流れを変えたのは、優勝インタビューで藤田監督も明言したとおり、「第4戦の香田」だったのである。

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