日本シリーズ 32年前の巨人「香田勲男」…崖っぷちから流れを劇的に変えたヒーローたち

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「生まれて初めて」のサヨナラ打

 巨人同様、86年の西武も、第1戦に引き分けたあと、3連敗から4連勝して、58年に前身球団・西鉄が成し遂げた奇跡を再現している。「2度目の奇跡」の立役者となったのは、当時23歳の工藤公康だった。

 0勝3敗1分で迎えた第5戦、1対1の延長10回から東尾修をリリーフした工藤は、5三振を奪うなど、3イニングを無失点に抑える。

 そして12回1死二塁で、工藤に打順が回ってきた。「代打かな?」と思ったそうだが、もし13回までもつれた場合、「今日の工藤なら抑えられる」と考えた森祇晶監督は「お前でいくぞ」とそのまま打席に送り出した。

 これに対し、広島は好投の北別府学に代えて、“炎のストッパー”津田恒実を投入してきた。初球は内角足元へのボール球。「次もインサイドで詰まらせにくるだろう。僕もピッチャーに投げるんだったら内角へいく」と投手心理を読んだ工藤は、「1、2の3」のタイミングで2球目を一振。狙いは見事的中し、右翼線に落ちる「生まれて初めて」のサヨナラ打となった。

「東尾さんが素晴らしいピッチングをしていたし、勝ちたかった。選手だけのミーティングで、“ここまで来たら、開き直って明るくやろう”と誓い合った」(工藤)

 投手のサヨナラ打は、58年の稲尾和久(西鉄)以来、史上2度目の快挙だった。工藤の投打にわたる活躍で大きな1勝を挙げた西武は、ここから4連勝して、シリーズ史上初の第8戦で3年ぶり日本一を達成した。秋山幸二の本塁打直後のバック転パフォーマンスでも知られるこの試合、1点リードの8回からリリーフした工藤も胴上げ投手になり、MVPに輝いている。

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