「脱炭素」で得するのは中国だけ? EVの原材料は中国頼り、550万人の雇用も崩壊

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「国費で中国を支援」

 自分の都合で好き勝手に石炭をバンバン燃やしながら、その一方でグリーン分野での金儲けの備えにも抜かりがない。また、自動車以外でも再エネに関わる事業は中国に首根っこを押さえられている。太陽光発電だ。

「政府が3年ぶりに改訂したエネルギー基本計画では太陽光を中心に再生可能エネルギーを36~38%とこれまでの2倍の水準に引き上げ、主電源にすると位置づけています。しかし、太陽光パネルの大半は中国製で、その原材料の多くは新疆ウイグル自治区で生産されています。日本は太陽光など再エネ事業者に多額の補助金を出していますから、国費で中国製パネルを支援しているようなものなのです」(前出・加藤氏)

 風力発電機でも、シェアの上位は海外勢に占められている。すなわち、日本が「脱炭素」に邁進するほど、中国を潤し、かの国から聞こえてくるのは高笑いなのだ。

 先の永濱氏が指摘する。

「私は現状の急激な『脱炭素』の流れには懐疑的です。世界中が脱炭素に急激に舵を切ったせいで、産油国に資金が流れにくくなることで石油などの化石燃料の増産が見込めず、価格が高騰しています。このままでは、開発途上国が化石燃料を輸入できず、世界的な格差の拡大にもつながります。また、日本でもガソリン代が高止まりしているように、今の生活をも直撃します。国際社会としても『脱炭素』に切りすぎた舵を少し戻す必要があるかもしれません」

 加藤氏はこう訴える。

「政府が優れた内燃機関を開発してきた日本の自動車メーカーのために闘わなければ、中国の後押しをすることになります。なぜ日本の製造業が弱体化する環境政策に飛びつき、国の重要産業を守ろうとしないのか。岸田文雄総理には国民経済を守る“ジャパン・ファースト”の政策を発信していただきたいと思います」

 巨大なカネが動く“グリーン”市場に日本が参入すれば、中国を肥え太らせることになる。

 習近平が仕掛けた巧妙で甘い罠。選挙を戦い抜いた岸田総理は胆力を見せつけ、抗うことができるか。“落日”を迎えるか否か、はそこにかかっている。

週刊新潮 2021年11月11日号掲載

特集「軍事力ばかりか経済戦争でも覇権膨張 中国が富み栄える『脱炭素』追随なら日本は落日」より

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