「脱炭素」で得するのは中国だけ? EVの原材料は中国頼り、550万人の雇用も崩壊

国際 中国

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材料、技術ともに世界をリードする中国

 2013年には、車載用リチウムイオン電池の世界シェアはパナソニックなどの日本企業だけで50%を超えていたが、ここ数年で中国、韓国勢に猛追され、現在のトップシェアは中国のリチウムイオン電池メーカーのCATLである。

 シグマ・キャピタル株式会社チーフエコノミストの田代秀敏氏によれば、

「環境政策では日本に比べ、中国は資源・技術の両面で優位性があります。脱炭素化技術に必須のレアアースは、中国が世界の総生産量の58%を占めると、米国政府機関は見積もっています。また、リチウムイオン電池に使用されるコバルトというレアメタルは、コンゴ民主共和国が生産量の約6割、埋蔵量の約半分を占めます。そのコンゴの対外債務の6割が中国からの借金ですが、その返済延期に即時合意するなど、中国はコンゴと密接な外交関係を結び、同国でのコバルト権益を確保しています。他にもBYDという中国のEV企業が衝撃に強いリチウムイオン電池を独自開発するなど技術的にも優位に立っています」

 その中国の狙いは、

「既存のガソリン車やハイブリッド車の産業に参入しても勝ち目がないことは中国もわかっています。しかし、EV車という新しい産業なら違う。どの国も横一線にスタートし、今では中国が生産でも使用でもトップシェアをとっています。そして脱炭素への世界的な環境政策の変化が、中国のEV車が世界に進出するチャンスを与えているのです」(同)

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