【体験記】コロナ禍で増加「国際ロマンス詐欺」にだまされてみた 「ロマンス詐欺あるある」に注意

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ロマンス詐欺“あるある”

 国際運送会社のジョンソンからも返信があった。

「あなたと送り主(ジェニファー)との関係にまで我々は関知しない。あなたは弊社を侮辱したから、罰則を受けてもらう。荷物は没収する」

 一体何の罰則なのだろう。もはや支離滅裂だ。駄目押しに私は、イギリスの企業登記局にジョンソンの会社が登録されていなかった取材結果を伝え、説明を求めるメールを送った。案の定、梨の礫(つぶて)だった。

 詐欺に注意喚起をしているサイト「ストップ!国際ロマンス詐欺」を運営する新川てるえ氏は、500人近くの被害者に調査した経験から、ジェニファー一味は「間違いなく国際ロマンス詐欺グループだ」と言い切る。

「『ジェニファー』っていうのはよく使われている名前です。米軍施設にいて外部と連絡が取れない、という言い訳も“あるある”です。国際運送業者のサイトは偽造で、彼らは簡単に作ってしまいます」

 そう説明する新川氏によると、最近では新たな手口が使われているという。

「出会い系サイトで近づいてきて、ビットコインやFXを教えてあげる、と。最初は少し儲けさせてくれるんですが、段々要求額が大きくなり、数百万円単位のお金を振り込んだところで音信不通になる被害が出ています。彼らは詐欺師だと認めないでしょう。バレそうになったら言い逃れるマニュアルがあるのかもしれません」

 それにしても、果たしてジェニファーはどこに身を隠しているのだろうか。半年もやり取りを続けてきた彼女との連絡がすっかり途絶えた今、もう「ハニー!」と呼ばれることはない。どこか刺激のない現実に引き戻されたようで、ジェニファーとの「非日常」が去ってしまったことに、一抹の寂しさを覚える自分に気づく。そんな私をよそに、きっと彼女は今日も新たな「ハニー」を狙っているに違いない。

水谷竹秀(みずたにたけひで)
ノンフィクション・ライター。1975年生まれ。上智大学外国語学部卒。2011年『日本を捨てた男たち』で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。10年超のフィリピン滞在歴をもとに、「アジアと日本人』」について、また事件を含めた現代の世相に関しても幅広く取材している。

週刊新潮 2021年11月11日号掲載

特集「コロナ禍で増加 『国際ロマンス詐欺』に騙されてみました」より

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