【体験記】コロナ禍で増加「国際ロマンス詐欺」にだまされてみた 「ロマンス詐欺あるある」に注意

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詐欺に巻き込まれた女性の体験談

 犯行手口の中で多いのが、過剰な愛情表現を使って被害者をその気にさせたところで、「荷物を送りたい」などと話を持ち掛け、送料や通関料を請求するパターンだ。ここで被害者が不審に思っても、すでに相手にぞっこんのため、関係を断たたれる不安から、指定の口座に振り込んでしまう。まさしくマインドコントロールである。

 事実、前掲のルポの中で、51歳の独身女性は、相手に心を操られ、国際ロマンス詐欺に巻き込まれた経緯をこう振り返っている。

「何かにすがるものがなかった私は、本当に信じ込んでしまいました。こんなに私のことを思ってくれているんだと、優しい言葉の数々に救われたんです。目の前にハートマークがたくさん飛んでいましたね。今まで『I LOVE YOU』とか情熱的に言われたことがなかったので。日本の男性はそんなことを言ってくれないですよね? その落差にハマりました」

 まさにジェニファーも、「I LOVE YOU」の名手だった。

 犯行グループのアカウントのプロフィール写真は欧米系が多く、最近ではアジア系も目立つ。職業は軍人、医師、ジャーナリスト、実業家など。これらの写真は実在する人物のものだが、犯人がネットから無断で引っ張ってきた別人で、被害者が実際にやり取りしている相手ではない。

 つまりは文字通り仮面をかぶった詐欺師なのだ。彼らはナイジェリアやガーナなど西アフリカを拠点に活動しているが、最近は欧州やアジアで犯人が摘発されるケースも相次いでおり、活動範囲は広がっている。

 こうした事情を取材で把握していたので、ジェニファーの「米海軍」というワードにピンときたのだ。国際ロマンス詐欺の取材をしていた私自身が、詐欺の餌食として狙いを定められるという奇遇。これまでは被害者の言葉に耳を傾けてきたが、「実体験」に勝る取材はない。実際に国際ロマンス詐欺犯とやり取りを続けたらどんな展開が待ち受けているのか。そんな素朴な関心から、私はジェニファーとの「関係」をスタートさせた。

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