「工藤会」頂上作戦時の「収支報告書」から見る稼ぎ具合、極刑判決が与えたヤクザ界への衝撃

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つくづくヤクザをやるのが嫌になった

 この捜査関係者が続ける。

「2018年には工藤会の象徴だった本部事務所も固定資産税の滞納で差し押さえられ、その後、売却、解体されています。市民と暴力団が『持ちつ持たれつの関係』だったのは過去のことだと、(北九州市)小倉の繁華街を歩いてもらえばすぐに分かりますよ」

 一般市民への攻撃を繰り返してきた特定危険指定暴力団としての特殊性と、鉄壁の指示命令系統を明らかにした警察、検察側の執念を念頭に置けば、即座に他の指定暴力団に工藤会裁判の判例が適応されるかは議論の余地があろう。

 しかし、民事裁判に目を向ければ、今年6月に特殊詐欺の被害者ら約50人が指定暴力団住吉会のトップらを相手取り、暴力団対策法の代表者責任を基に賠償金の支払いを求めた訴訟で、住吉会側が約6億5000万円を支払い和解が成立したケースもすでにある。

 同様の訴訟は全国で相次ぎ、最高裁でトップの賠償が確定した事例もある。配下の組員が暴力団の威光を使って不当な利益を得れば、組織のトップは関知していなくても賠償責任を負わされるのだ。

 その理屈は、野村被告の極刑理由を「暴力団の組織力を利用して首謀者として関与した」とする福岡地裁の判決と通ずるものがある。

「今時、実入りが良いヤクザは、昔稼いだ金で正業に転じたごくわずかだけ。それ以外は覚醒剤などの禁制品に手を出したり、特殊詐欺でお年寄りをだましたりしなければ食っていけない。それすら一歩間違えれば、親分の命取りになる場合さえある。ましてや抗争で殺人でも犯せば一発でアウト。今回の極刑判決でヤクザをやっているのがつくづく嫌になったというやつも多いんじゃないか」(警察幹部OB)

 刑事でも民事でも包囲網は狭まるばかり。暴力団の斜陽は明らかだ。

デイリー新潮取材班

2021年11月11日掲載

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