膝の怪我で7回手術……バレーボール35歳「清水邦広」が満身創痍で現役を続ける理由

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《僕の日本代表もこの東京オリンピックで終わりました。(中略)次の代表の未来は若い選手に託します!》

 パワフルなプレーで多くのバレーボールファンを魅了した清水邦広(35、パナソニックパンサーズ)が、8月5日、Instagramで日本代表からの引退を公表した。

 長く怪我に苦しみながらも、東京五輪出場を果たした清水に、怪我との向き合い方や現役を続ける理由、若い選手たちへの思いなどを聞いた。

もう一度がんばってみてほしい

 清水は大学卒業後にVリーグで活躍し始めてからも、手や足など度重なる怪我に見舞われた。しかし、「(バレーボールを続けることは)もう無理だ」と気持ちが途切れたのは、1度だけ。2018年2月18日、JTサンダーズ戦での大怪我だった。

「怪我をした瞬間、膝があり得ない方向に曲がっていたので、これはとんでもないことになったとすぐに悟りました。自分は痛みに強いほうだと思っていたのですが、体が少しでも揺れると気絶しそうになるほどの激痛が走り、スタッフが担架に乗せることすら、なかなかできませんでした」

 病院での診断結果は、右膝の前十字靭帯断裂、内側側副靭帯断裂、半月板損傷、軟骨損傷で全治12ヵ月。選手生命が絶たれてもおかしくはない重傷だった。

「その前年、右足首の舟状骨を疲労骨折し、10ヵ月間のリハビリを終えたばかりだったのに、この時の怪我は治るまでさらに長い時間がかかってしまう。32歳という年齢を考えても、トップのパフォーマンスに戻せるとは思えず、治療に当たったドクターに『もうバレーはやめます』と伝えました」

 涙を浮かべて話す清水に、主治医である荒木大輔医師(神戸大学医学部附属病院整形外科)は、「今決めないで、もう一度がんばってみてほしい。それでも納得がいかなかったらやめてもいい」と、切々と説いたという。

「荒木先生は、『10年前なら選手生命が絶たれていたと思うけれど、今は医学も発達して治療法も複数選択できる。最適な治療法を模索していくから』と、他の足の専門医も呼んできて、一緒に治療法やリハビリについて説明してくれました。選手を思う先生の気持ちに触れて、もう一度やろうと思えたんです」

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