情緒不安定の妻にフライパンで殴られ…不倫がバレ、子どもに会えない夫が語る“泥仕合”

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たまたま出会った子供の保育士

 妻にはたびたび面会していた。日を追うにつれて表情が柔らかくなるのがわかった。妻自身も「私、どうしてあんなにカリカリしていたのかしら」と言うほどに回復したのが3ヶ月後。自宅療養を経て、そろそろと仕事にも復帰したが、なんとかやっていけそうだった。もちろん、しっかり安定したわけではないが、彼女自身が子どもたちと過ごすことを希望したのだ。

「ほっとしたのが38歳のころでしたね。僕が40歳のときに上の子が、翌年、下の子が小学校に入学して、これでもう大丈夫かなと思ったときに、子供の保育園でお世話になっていた先生とばったり会って……」

 ある夜、大学時代の友人数人と久しぶりに食事をしていたら、社内の他部署の女性に声をかけられた。彼女の席を見ると、そこに保育園の先生がいたのだ。どうして、とつぶやくと、彼女は「え、知り合い? 妹なんですけど」と驚いていたという。

「お互いにそんな偶然ってあるの、という感じでした。先生は『タカコさん』というので、子どもたちからタカちゃん先生と人気があったんです。僕も感じのいい先生だから、よくいろいろ話していた。でもレストランで会うと、先生というよりはとても素敵なひとりの女性でした」

 そのときは挨拶しただけだったが、友人たちと別れて駅に向かうと、またもばったりタカコさんに会った。ふたりとも笑ってしまったという。

「姉がカラオケに行こうと言ったんですが、今日はちょっとその気になれないと断って帰るところだった、と。僕も友人たちのもう一軒行こうという誘いを断ったんですよ、とまた笑い合って。最寄り駅が隣同士なので、同じ電車に乗って行きました」

逢瀬は「ご褒美みたいなもの」

 だが、彼女が先に降りるとき、なぜか彼も降りてしまった。どうしても別れがたかったのだ。気持ちより先に体が動いた。申し訳ない、どうしてもまだあなたと別れたくないと彼は言った。

「彼女はクスッと笑って、『私も。もう一軒行きましょうか』と。駅前のバーで飲んでしゃべって。時間を忘れました。彼女もけっこう酔っていたので、送っていったんですが、部屋の前で彼女が『もうちょっと飲みましょ』って」

 もうこうなるとお互いに確信犯である。相手の気持ちをわかりながらいろいろ言い訳をしているだけで、ふたりきりになるのは暗黙の了解になっているのだ。これが不倫の始まりである。

「そんなつもりはなかった……と思います。でもねえ、ひとり暮らしの女性の部屋に入ったら、それはもう」

 彼女は彼より4歳下。実はバツイチなのだという。保育の仕事をしながら、今は大学院にも通っていると聞いて、その熱心さに圭祐さんは驚かされた。

「それを機会にときどき会うようになりました。彼女はうちの妻の病気のことも知っているので、僕自身はちょっと負い目みたいなものを感じていたんですが、まったく気にせず、目の前の僕のことだけを見てくれました」

 1年にわたって関係は続いた。もちろんその間、彼は早く帰れるときは子どもたちの夕飯の支度もしたし、妻のケアも心がけた。週末は家族で外出したりもした。ただ、妻の精神状態は不安定が続いた。けっきょく仕事は続けられず、退職して近所で週に数回、パートで働くようになっていた。ちょっとしたことで怒ってテーブルにおいてあったカップを投げつけられたこともある。

 それもあって、彼の心の中にはいつもタカコさんのことがあった。タカコさんと会うのは、いつも一生懸命がんばっている自分へのご褒美みたいなもの。逆に言えば、ふだんがんばっていないとタカコさんには会えないと自分に暗示をかけていた。家庭と恋を両立させるために、彼にはそういう思い込みが必要だったのだ。

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