元公安警察官は見た 不良外交官が日本のヤクザに協力 大使館“闇カジノ”の実態

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 日本の公安警察は、アメリカのCIAやFBIのように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。この9月『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、大使館内で闇カジノを行った駐日大使について聞いた。

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 中央アジアやアフリカなど、あまり裕福ではない国から来た駐日大使館の外交官の中には、日本滞在中に“内職”する輩がいる。外交特権に目をつけた日本の暴力団が彼らに接近し、多額の謝礼金をエサに賭博の場所を提供させるのだ。

「いわゆる“大使館カジノ”は20年ほど前から散見するようになりました。闇カジノというと、内職したい外交官が借りたマンションの一室で開かれることが多いですね。マンションのドアに、『〇〇大使館』と国名を書いたプレートを掲げるわけです。それなら警察も簡単には踏み込めないと考えたのでしょう」

 と語るのは、勝丸氏。かつて公安部外事1課の公館連絡担当班に所属していた同氏は、大使館や総領事館との連絡・調整を主な任務とし、日頃から各国の外交官と接触していた。

PNGを通告

 ウィーン条約で、大使館や大使公邸、外交官の住居として認められた敷地は「不可侵権」があり、「捜索、徴発、差押え又は強制執行を免除される」(第22条)と規定されている。

「大使館や外交官の住居はすべて、外務省に申請して承認を受けることになっています。承認されれば不可侵権を持つわけですが、申請していない建物には警察は踏み込むことが可能です」

 実際、過去に“大使館カジノ”が摘発されたケースがある。

 2005年、東京・南麻布のビルの一室にあった闇カジノが警視庁に摘発された。コートジボワール大使館の外交官が、自分名義で部屋を賃貸して暴力団に提供していたのであるこの外交官は、外国公館のお目付け役と言われる外務省の儀典官室から、PNG(ペルソナ・ノン・グラータ、好ましからざる人物)であると通告され、その後出国した。4年後再来日した時、外交特権は消滅していたため、警視庁に逮捕されたそうだ。

 2014年には、ガーナ大使が自分名義で賃借していた東京都渋谷区と福岡県福岡市の部屋で賭博が行われていることが判明、警視庁が摘発した。大使は警察の捜査が入ったと知るや、仕事を放り出して出国したという。

「10年前になりますが、東京・西麻布にある中央アジア某国の駐日大使館では、大胆にも敷地内でカジノを開いていました」

 勝丸氏はある時公館連絡の仕事でこの大使館を訪問し警視庁に戻ると、警視庁の2つの部署から話を聞きたいと言われたという。

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