元公安警察官は見た 不良外交官が日本のヤクザに協力 大使館“闇カジノ”の実態

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事情聴取された大使

「賭博犯罪を担当する生活安全部保安課と暴力団捜査を担当する組織犯罪対策部組対4課でした。さらに、所轄警察署の刑事もやってきました。それぞれ別々のルートから大使館で闇カジノが行われているという情報をつかみ、内偵捜査をしていたのです。大使館の内部の構造や館内に何人いるか、詳しく知りたがっていました」

 大使館の敷地には、本館と別館の2つの建物があった。

「別館と称する2階建ての一軒家で、夜になるとカジノが行われていました。夕刻になると大使館職員が見張りに立ち、周囲に目を配りながら客を中に通していたそうです」

 問題は、この別館に不可侵権があるかどうかだった。

「保安課も組対4課も、最大の関心はそこにありました。外務省に確認したところ、別館のある場所は大使館として承認された敷地にあり、不可侵権があることになっていました」

 勝丸氏は、担当の捜査員たちにガサ入れはできないと説明した。

「捜査員たちに『大使館の敷地内なので、踏み込めばウィーン条約違反になります。ガサの令状もおりないでしょう』と言うと、『なにか方法はないでしょうか』と言われましたが、『ありません』と回答するしかなかったのです。目の前で違法行為が繰り返されているのに、まったく手出しができないというのは、警察官にとって悪夢のような状況です」

 ところが、事態は思わぬ展開となった。

「ある週刊誌が、この大使館カジノを隠し撮りしてすっぱ抜いたのです。外務省儀典官室がこの記事を問題視して、大使を事情聴取のために呼び出したんです」

 確かに、その週刊誌を確認すると、バカラ賭博の様子が隠し撮りされ、写真付きの記事が載っている。12畳ほどの部屋にバカラ台が2卓置かれ、客は10人ほどでプレイに興じていた。100万円分はあろうかというチップを手にバカラを楽しむ金正男に似た男性……。フロアでは韓国語も飛び交ったとか。

 その大使は儀典官室にどのような説明をしたか不明だが、

「その数カ月後、問題の大使館は突如、渋谷の高級住宅地にある一軒家に移転しました。以前の大使館に比べるとかなり手狭になっていました。大使は私に『ちょうど契約更新のタイミングだったから引っ越した』と言っていましたが、それ以降新しい大使館でカジノが行われたという話は聞こえてきません」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

2021年11月2日掲載

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