首都直下型地震で警戒すべき「埋没谷」とは 注意すべき3エリアは?

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都内3カ所の埋没谷の位置は

 そこで、あらためて産総研の中澤グループ長に、埋没谷について語ってもらうことにしたい。

「東京には大きく分けて三つの埋没谷があります。一つは、23区の東部に広がる東京低地の地下。いま荒川が流れていますが、昔は利根川も東京湾に流れ込んでいました。そうした川が氷河期に谷を作り、そこがやわらかい沖積層で埋まって、埋没谷になりました。新木場あたりから墨田区、江戸川区、葛飾区、足立区まで川沿いにつながり、埼玉県の川口や蕨も同様です。次に、われわれの調査で新たにわかった、武蔵野台地の埋没谷があります。そこは沖積層ほどではないものの、やわらかい泥層で埋められていて、台地をつくる地層としては、かなりやわらかい。一つは高輪から恵比寿、渋谷、代々木にかけての埋没谷で、深さがおよそ10~30メートル、長さはおよそ10キロ、幅が3~4キロほどです」

 1万年前までの氷河期にできた、深いところでは地表から80メートルという地下の地形が、いまもわれわれに影響を与えているというのだ。もう一つの埋没谷は、

「世田谷区西部の多摩川沿いの台地にあり、高輪の埋没谷とほぼ同時代にできています。確認できる範囲では、長さ約10キロ、幅が約1・5~3キロほどで、世田谷の埋没谷のほうが高輪の層よりも泥分が多く、地層としては少しやわらかい」

 それでは中澤グループ長は、埋没谷と、先日の地震の揺れとの関係を、どう評価するのだろうか。

「震度が大きかった足立区から川口方面は、埋没谷が埋める沖積層が地下に分布する地域。震度5弱を観測した大田区も、多摩川低地の埋没谷を沖積層が埋めている。実は、震度5強や5弱を観測した地域のほとんどは、地下に埋没谷があり、沖積層が分布しているといえるのです」

 たとえば、舎人ライナーが脱輪した地点も、埋没谷の上に位置する。もっとも、埋没谷がある地域は必ず揺れる、という単純な話ではないという。

「足立区と同じ一連の埋没谷が分布している墨田区や江戸川区は、足立区や川口より震源から近いのに、さほど大きく揺れませんでした。地盤の条件が似ていても、揺れやすさに違いがあるのが気になります。沖積層はせいぜい数十メートルの深さ。もっと深い部分の地質構造や、地震そのものの特性なども関係するなど、種々の要因が重なって、局所的に揺れが強くなることがあるのでしょう」

 とはいえ、「埋没谷」が揺れにとって、一つのキーワードであることには変わりない。産総研のマップを参考に、自宅の周囲の地盤を確認したり、転居する場所を選ぶ際の参考にしたりする価値はあるだろう。

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