“富士山噴火”で東京への影響は? 火山学者が解説
高さ3万メートルのマグマ
現在、御嶽山だけでなく富士山の噴火も懸念されているが、富士山が噴火した場合、東京にまで被害が及ぶ可能性があるという。富士山が噴火したときの影響について、ビートたけしが京都大学大学院教授の火山学者・鎌田浩毅氏に訊いた。
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たけし:危険だという火砕流は雲仙普賢岳が噴火したときにも出て、大勢の死者を出しましたよね。富士山が噴火した場合、すぐに火砕流が出てくる可能性もあるんですか。
鎌田:順番がありまして、最初に火山ガスが出て、その後マグマがポンポン噴き出して、そのマグマがドーッと噴き上がって、3万メートルとか立ち上がることがあります。その立ち上がったマグマが、あるとき一気にどかっと落ちることがある。そうすると、熱い火山灰とか、マグマのかけらがドーッと流れ落ちる。それが火砕流なんですね。
たけし:えーっ! 高さ3万メートルですか。ジャンボジェット機が上空1万メートルぐらいを飛んでいる。その3倍の高さまで噴き上がるんだ。
鎌田:粉々になったマグマが柱のように噴き上がることを噴煙柱といいます。これが立ち上がると二つの意味で危険です。上空には偏西風といって、ジェット気流が流れている。この風は西から東へ吹くので、もし富士山が噴火したら、東側に位置する東京、神奈川、千葉、要するに京浜の政治・経済・文化の中心のところに全部行くわけです。ちょうど江戸時代、新井白石がいた頃なのですが、1707年の富士山の噴火ではマグマが噴き上がって、その灰が江戸まで飛んで来たという記録があります。もう一つの危険性が火砕流を生じること。富士山の麓に流れると出口から10キロぐらいは焼け野原になるでしょうね。
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被害総額は2兆5000億円?
たけし:火山灰が東京に来たら被害がすごいでしょうね。
鎌田:火山灰はいわゆる炭が燃えて残る灰とは違って、噴出した軽石や岩石が細かくくだかれたもの。ガラスの粉みたいなものなんです。火山灰が東京に降り注ぐと、コンピューターは埃に弱いので突然動かなくなります。そうすると、コンピューターによって制御されていた電気・ガス・水道といったライフラインが全部止まる。それから、水を含むとセメント状態になって、下水道なども詰まってしまう。体内に入ると、人体にも影響が出る。その被害は内閣府による推計だと、2兆5000億円という数字になっています。1万円札で積み上げると富士山の6.5倍もの高さになるんです。
たけし:いや、そんな額じゃ済まない気がするな。本当においらたちはとんでもないところに住んでいる。
鎌田:でも、火山って悪い点ばかりではありません。「恵み」があるんですよ。温泉とか、ミネラルウォーターとか。ミネラルウォーターは火山が濾過したおいしい水ですよね。火山の下はマグマで熱い、その熱で地下水が温泉になって湧いてくる。だから、火山は災害半分、恵み半分なんです。自然の恵みがあることも忘れてはならないと思います。
※本対談の全文は、『たけしのグレートジャーニー』に収められている。