【袴田事件と世界一の姉】味噌タンクに「5点の衣類」を放り込んだ警察の大胆な捏造工作

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「2年や3年が何ですか」

 今年8月30日、東京高裁で3度目の「三者協議」が開かれた。当事者(再審申立人保佐人)なのに協議に参加できない不条理にも強い不平をこぼさないひで子さんは、いつも弁護団の西嶋勝彦団長、小川秀世事務局長らとともに終了後の記者会見に顔を出す。進行が遅いことで高齢の袴田姉弟を案ずる質問が出ると、ひで子さんは「もう50年近くやってきたんだから。いまさら2年や3年待つことが何ですか」とへっちゃらな様子で答え、記者もタジタジになってしまう。

 弁護団は新たな証人として「事件直後に味噌タンクを徹底的に調べたが、何もなかった」と証言している静岡県警の80歳を超える元捜査員を申請した。それに対し検察は、「血痕の色の吟味には関係なく不要」としている。そもそも「犯行時の着衣」を1年も経って変更するという不自然さのままに原審が進んだことが異常だが、仮に当初この捜査員の証人申請が採用されていれば、すぐに無実が証明されていたわけだ。

「味噌漬け実験」

 小川事務局長によれば、この元捜査員は今も「袴田さんを犯人だと思っている」と話しているというから、逆に証言の信ぴょう性は高いといえる。

「微量すぎて血痕か汚れかの鑑定も不能に陥ったパジャマでは立件が苦しくなった検察・警察が、衣服を味噌タンクに放り込む大胆な捏造工作をした。しかし、袴田さんは前年8月に逮捕されており、彼が放り込んだなら衣類が味噌タンクに放置されてから1年が経過しており、血の跡が赤いままのはずはない」と語るのは、「袴田巖さんを支援する清水・静岡の会」(楳田民夫会長)の山崎俊樹さん(67)だ。

 ちなみに、この味噌タンクは事件後も使われ続けていた。「こがね味噌」は麻袋に入った服が浸かったままの味噌タンクを一度も洗いもせずに、1年以上も使い続ける「不潔な味噌造り」だったのか。

「白味噌でも3日もしないうちに黒っぽくなりますよ」と言う山崎さんが執念を燃やした「味噌漬け実験」の結果が、「5点の衣類」に関する真相を明らかにし、50年以上の審理に終止符を打つはずだ。

 ひで子さんは「山崎さんは、私が行かれない時も代わりに拘置所へ接見に行ってくれました。警察が事件の翌年に味噌タンクから見つけたとする衣服に疑問を感じて味噌漬け実験をしてくれ、再審へ大きな力になりました」と全幅の信頼を置く。

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