岸田首相から3匹目のドジョウ狙う韓国 米中対立で日本の「輸出規制」が凶器に

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ウソだらけの大統領発言

――「日本の輸出規制は失敗した」と韓国側は言っていませんでしたか?

鈴置:ええ、文在寅大統領は「日本の敗北、韓国の勝利」を叫んできました。日本の韓国専門家のなかにはそれを受け売りする人も登場しました。でも、大統領発言はまったくのウソだったのです。

 今年7月2日にも、韓国政府が開催した「大韓民国 素材・部品・装備産業 成果懇談会」で演説した文在寅大統領は「半導体素材分野での日本の輸出規制に打ち勝った」と宣言しました。

 次世代ディスプレーの材料となるフッ化ポリイミド、高機能半導体の回路を描くための感光材であるEUVレジスト、半導体の製造工程で基板洗浄用に使う高純度のフッ化水素の「輸出規制3品目」に関し、具体例を挙げて成果を誇ったのです。以下です。

・フッ化ポリイミドは国産技術を確保したうえ、輸出にまで乗り出しました。
・EUVレジストはグローバル企業の投資を誘致し、国内での量産を控えています。
・50%に肉薄していたフッ化水素の対日依存度を10%台に落としました。

 まず、フッ化ポリイミド。国産化したと豪語する割に、韓国の対日輸入はほとんど減っていません。日本の貿易統計でフッ化ポリイミド(品目コード391190300と391190900の合計)の対韓輸出量と金額を調べると、2018年は5490トン(52億円)、2019年は4790トン(50億円)、2020年は4589トン(50億円)です。

「EUVレジストを韓国で量産するグローバル企業」とは米デュポンを指します。その「韓国でのEUVレジスト生産」は韓国政府が2020年1月9日に一方的に発表したに過ぎません。デュポン側が明かしたことはありませんし、韓国政府の発表後2年近くたった今も韓国生産に動くそぶりをみせていません。

ようやく「横流し」を中止

 フッ化水素の対日依存度が落ちる――日本からの輸入が減るのは当然です。日本政府が2019年7月1日に対韓輸出管理の強化に乗り出したのは、韓国企業が日本から輸入したフッ化水素を第三国に再輸出、つまりは「横流し」していたからです。

 韓国の国会でも同年7月12日、保守系議員が「横流し事件」を追及しています(「日本に追い詰められた韓国 米国に泣きつくも『中国と手を切れ』と一喝」参照)。

 日本政府の輸出管理強化に驚いた韓国政府が、遅ればせながら民間の行政指導に乗り出した結果、対日輸入が減ったのです。

 韓国の貿易統計を見ますと、2020年の半導体製造用フッ化水素(品目コード2811111000)の総輸入量は4万2200トン。2021年も同程度の輸入量になる見込みで、これらから韓国国内の真の需要量は年間4万トン強と見られます。

 一方、2018年の総輸入量は8万3300トン、年央から輸出管理の強化を余儀なくされた2019年は6万400トン。日本に脅されるまで、韓国が年間4万トン前後のフッ化水素を「横流し」していたと見ると、ぴったりつじつまが合うのです。

 「韓国半導体メーカーが日本以外からの輸入や、国産品に切り替えた」と韓国政府は主張します。確かに輸出管理の強化以降、日本製のフッ化水素を台湾製で代替する動きが一気に表面化しました。

 2019年10月6日、中央日報は「韓国、フッ化水素輸入多角化…日本製大きく減少、台湾製急増」(日本語版)で、概ね以下のように報じました。

対日輸入は減らず

・2019年8月の台湾製のフッ化水素の輸入額は257万1000ドルで、全輸入額の39・9%を占めた。前月の112万9000ドル、全体の14・2%と比べ急増した。
・半面、同年上半期に529万3000ドルと48・5%の輸入シェアを占めていた日本製は7月に96万1000ドルに急減し、8月にはゼロを記録した。

 ただ、この記事も指摘する通り、「台湾製」の多くが日本メーカーの台湾工場で製造したフッ化水素であり「切り替えにより日本の産業が損害を被っている」わけではありません。

 韓国製に切り替えた場合は、日本製ほど純度が高くないため不良率が上昇するはずです。韓国の半導体各社がどれだけ国産品を使っているのか、極めて怪しいのです。

 全経連は10月6日、岸田政権発足に合わせ「日本の新政権出帆を契機に実益のない韓日経済葛藤を止めよ」という報告書を発表しました。

 それによると、この3品目の2019年下半期以降の2年間の対日輸入額は、それまでの2年間と比べ0・67%しか減っていません。

 品目コードは日韓で微妙に異なるため、日本の対韓輸出のデータとは必ずしも一致しませんが、「輸出規制で日本の素材メーカーが大損した」わけではないことがこれからも分かります。

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