岸田首相から3匹目のドジョウ狙う韓国 米中対立で日本の「輸出規制」が凶器に

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 韓国が国を挙げて岸田文雄新政権にラブコールを送る。米中対立の激化で日本の輸出管理強化が韓国経済の首を締め始めたから、と韓国観察者の鈴置高史氏は見る。

中露より「後回し」

鈴置:9月29日に岸田新政権の発足が判明するや否や、青瓦台(韓国大統領府)は「我が政府は新たにスタートする日本の内閣と、韓日間の未来志向的な関係発展のため、引き続き努力する」との談話を発表しました。

 翌30日の韓国各紙も社説で「岸田は韓国との関係を改善せよ」と訴えました。中央日報は「日本の新首相を機に韓日関係の正常化を」(日本語版)で「韓日首脳会談を実施せよ」と主張。

 東亜日報は「日本の新総理、岸田は安倍路線を捨て韓日関係の改善に出よ」(韓国語版)で「安倍政権以降の(対韓強硬)路線を修正せよ」と要求しました。

 政府系紙、ハンギョレも「岸田新総裁選出、韓日関係リセットの契機にしよう」(日本語版)で「日本は韓国との対話に乗り出せ」と訴えました。

 もっとも、韓国の希望は直ちに打ち砕かれました。10月4日に首相に就任した岸田氏は、5日に米豪、7日にロシア、8日に中印、13日には英国の首脳に電話をかけ就任挨拶をしましたが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領との電話協議は15日と大幅に遅らせました。韓国を中露よりも後回しにしたのは日本の外交史上、極めて異例です。

 韓国人にとってもこの扱いは驚きだったのでしょう。ハンギョレは「岸田首相、韓国飛ばして各国首脳と電話会談」(10月11日、日本語版)で「中露よりも軽んじられる韓国」と報じました。

同盟国・同志国から除外

「韓国軽視」は岸田首相の8日の所信表明演説でも明らかとなりました。岸田首相は「自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を守り抜く」と決意表明したうえ「米豪印にASEAN、欧州などの同盟国・同志国と連携する」と表明しましたが、そこに韓国の名はなかったのです。

 韓国についても一応は触れ「重要な隣国」と表現したものの、安倍政権でさえ一時期は使っていた「基本的価値観を共有する」との形容詞はつけませんでした。

 さらに岸田演説は「健全な関係に戻すためにも…(中略)…韓国側に適切な対応を強く求めて行きます」と述べ、韓国の数々の不法行為を国民に思い出させたのです。

 文在寅大統領は4日、岸田新首相に送った祝賀書簡で「両国は民主主義と市場経済という基本的な価値を共有する」とすり寄っていました。それに対し岸田首相は「おたくは価値観を共にする仲間ではない」と冷たく突き放したのです。

 韓国語のネット空間では「我が国を馬鹿にする」日本への怒りが爆発しました。というのに12日、青瓦台は「韓日首脳の電話会談は日程を調整中」と明かし、新首相への期待を隠しませんでした。はらわたは煮えくりかえっていたのでしょうけれど。

日本は蛮行をやめよ

――韓国政府はなぜ、それほど卑屈になったのでしょうか。

鈴置:2019年7月の韓国に対する「半導体素材の輸出管理強化」――韓国の言う「輸出規制」――が効いてきたからです。先に引用したハンギョレの社説でも、チラリと本音をのぞかせています。

・岸田政権が韓国に対する報復性の半導体輸出規制を解除し、強制動員と慰安婦被害者に対する謝罪と賠償に前向きな立場を示すよう願う。

 朝鮮日報の東京特派員経験者、李河遠(イ・ハウォン)国際部長の書いた「<太平路>次期大統領は岸田日本総理と『大和解』を推進せよ」(10月4日、韓国語版)はもっとはっきりと要求しました。

 「反文在寅」の朝鮮日報らしく、この政権での日韓関係改善に見切りを付け、次の大統領と岸田首相に期待した論説ですが、日本への要求を「半導体素材の輸出規制」一本に絞ったのです。

・岸田政権も半導体部品の輸出規制という蛮行を撤回する準備をし、来年の韓国の大統領選挙以降に備えねばならぬ。

 李河遠部長は「輸出管理強化」を「蛮行」とまで呼びました。韓国の生命線をいかに痛撃したかが分かります。こうしたメディアの姿勢の背景には当然、財界の困惑があります。

 中央日報の「韓国全経連、日本の輸出規制から2年間の両国競争関係変化を分析」(10月5日、日本語版)によると、日本の経団連に相当する全経連のキム・ボンマン国際協力室長は以下のように述べました。

 ・日本の新政権が発足しただけに、実効性を喪失した韓日相互輸出規制は外交問題と分離して両国の通商当局間の公式交渉を通じ早急に終えなければならない。

――「新政権が発足すると実効性は喪失する」のでしょうか。

鈴置:韓国人独特の強弁です。韓国では外交政策の連続性が乏しい。日本も政権が代われば政策も変わって当然、との思い込みもあるのでしょう。

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