緊急事態宣言が解除されても…「鉄道フェスティバル」3年連続中止の重要な意味

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「鉄道フェスティバル」は今年も中止に

 鉄道事業者が誘客を活性化させる一方、日本全国の鉄道ファンが心待ちにしている「鉄道フェスティバル」は、今年も中止になった。

 鉄道フェスティバルは、国土交通省の前身でもある鉄道省が鉄道の開業を祝う日として1922年に「鉄道記念日」を制定したことが発端とする。

 その後に運輸省が「鉄道の日」と名称を変更し、現在へと至る。鉄道の日は平日になることもあるので、その前後の土日に東京・日比谷公園で鉄道フェスティバルが毎年開催されてきた。

 鉄道フェスティバルは、鉄道事業者だけではなく駅弁販売を手がける日本レストランエンタプライズ、日立製作所や三菱電機といった車両・部品メーカー、人気アニメ「新幹線変形ロボ シンカリオン」を手がけるタカラトミーのほか鉄道模型や関連グッズを手がけるホビーメーカー、そのほか鉄道と関連性が高いキヤノン・共同印刷・凸版印刷といった名だたる企業もブースを出展する。

 また、CO2の削減を意図して自社製品を貨物輸送へと切り替えた菓子メーカーのブルボンなどもブースを出展したこともある。

 こうした企業名を並べただけでも、鉄道フェスティバルが鉄道という枠組みを超えた一大イベントであることがわかるだろう。

 JR・私鉄を問わず、全国の鉄道事業者が結集するイベントとして「鉄道フェスティバル」はお馴染みとなっていた。鉄道の日実行委員会事務局の担当者は「緊急事態宣言は解除されましたが、鉄道の日フェスティバルの会場となる日比谷公園を確保することをはじめ、準備が間に合いませんでした」と今年も中止になった事情を説明する。

 鉄道フェスティバルは昨年もコロナで開催を中止した。2019年も台風19号が接近していることを理由に中止になっている。つまり、3年連続の不開催となってしまった。

フェスの目的は

 昨今は撮り鉄の暴走行為が話題になり、鉄道ファン全体への風当たりは強い。鉄道に興味がなければ、「鉄道ファンを喜ばせるためだけのイベントなんて開催する必要はない」と一蹴してしまうかもしれない。

 しかし、事はそう単純ではない。前述したように、鉄道フェスティバルは鉄道事業者のほかにも名だたる企業がブースを出展している。これらの企業は、鉄道分野での技術開発で得た知見を他分野にも活かしている。

 鉄道フェスティバルは自社の技術力をお披露目する場でもあり、幼き少年少女へのPRの場、つまり次世代育成という目的も含まれている。

 また、ブルボンのように自社製品の輸送を鉄道貨物へと切り替えたことをPRする企業もある。ブルボンの取り組みは、明らかに鉄道ファンを対象としたものではない。

 そうした企業の動向からも窺えるように、鉄道フェスティバルは実のところ鉄道ファンを喜ばせるためだけのイベントではない。その鉄道フェスティバルが3年連続で中止になったことは、鉄道業界に空白を生みかねない危機でもある。

 鉄道業界の空白期間が長くなれば、それは日本の経済・産業・技術革新のあらゆる分野にも影響が出てくる。

 鉄道業界の凋落が、単に鉄道業界だけの話で済むのなら傷は浅い。鉄道は通勤や物流という面から経済やビジネスを下支えしてきた。それが機能しなくなるだけでも、今後の経済へのダメージは計り知れない。

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