薬局が「吉野家の牛丼」を売る2つの理由 ウエルシア34店舗で本格展開はじまる

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似たり寄ったりの売り場

 ドラッグストア業界をめぐっては、10月1日に、マツモトキヨシとココカラファインの共同持ち株会社「マツキヨココカラ&カンパニー」が発足したことも大きく報じられた。2020年度の連結売上高をみると、9496億円のウエルシアが業界首位で、9193億円のツルハがこれに続く。5569億円で業界6位のマツキヨと3664億円の7位のココカラが統合となると、一気に業界2位の存在になる。

「この業界は、再編や統合の動きが活発です。理由のひとつには、各チェーンで売るものに大きな差がないからというのもあると思います。たとえば、セブン-イレブンとファミリーマートでは、棚に並ぶ品物が全く違いますよね。お弁当や総菜もそうですし、飲料や日用品にもPB(プライベートブランド)の商品が充実しているためです。一方、ドラッグストアにもPBブランドはありますが、コンビニほど充実はしておらず、棚に並ぶものの多くは同じ大手メーカーの化粧品やシャンプーや洗剤、あるいは製薬会社の同じ薬です。つまりドラッグチェーンはどこも似たり寄ったりの売り場になりがちで、看板や店頭ポップを取り払えば、もうどこの店かわからない。“同質化”も業界の課題なのです」

 コンビニやスーパーと異なり、ドラッグストアが扱う医薬品は、メーカーへの返品が容易に行われるという。返品を前提とした商習慣ゆえに、売れ残りに対するバイヤーの緊張感がない。扱う商品は似たり寄ったりになってしまうのはそのためだと渡辺氏は指摘する。

「その点でも“吉野家の牛丼が買える”というのはライバルと差別化できますね。ウエルシアではほかに、北海道のコンビニチェーン『セイコーマート』の総菜などを扱う店舗や、おなじイオン系列の『オリジン弁当』を売る店もあります。わざわざ自社で開発しなくとも、“コラボ”のようなかたちで独自商品を売り場に置く戦略はクレバーです。もっとも、過去にはマツキヨとローソンストア100が業務提携し、生鮮食品を販売する店を作りましたが、結局拡大することなく終わりました。他社と組んで新たな事業を始めるも上手くいかない、というのもドラッグストアではよくある話。はたして吉野家の牛丼販売がいつまで続くか、注目です」

デイリー新潮取材班

2021年10月5日掲載

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