薬局が「吉野家の牛丼」を売る2つの理由 ウエルシア34店舗で本格展開はじまる

ビジネス 企業・業界 2021年10月05日

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 10月1日より、ドラッグストア大手の「ウエルシア薬局」の店頭で「吉野家」の牛丼の販売が始まった。今のところ関東の34店舗で展開されており、年内には50店舗での販売を目指すという。なぜ、薬局で牛丼を売るのか。そこにはドラッグストア業界特有の事情があるようだ――。

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 ウエルシア店頭での牛丼販売は、昨年から一部の店舗で実験的に行われており、今回、本腰を入れた格好だ。吉野家の店舗で調理した牛丼をウエルシアに納品し、弁当として販売する仕組み。狙いは何か。

ドラッグストアがコンビニに勝てない点

 マーケティングアナリストの渡辺広明氏は、次のように語る。

「通常、小売業の利益率は30%とされていますが、医薬品に関しては50%前後といわれています。これまでドラッグストアは、日用品などの安売りで集客し、医薬品で儲けるというビジネスモデルをとってきました。ところが14年には医薬品のインターネット販売が解禁されました。今後オンライン診療の仕組みが整備されれば、薬剤師が不在のコンビニなどでも薬が買えるようになることも予想されます。つまり、医薬品というドラッグストアの強みが薄れつつあるのです。そこで新たな集客の策として、各社は食品に力を入れ始めました」

 経済産業省の商業動態統計をみると、ドラッグストア業界の売り上げ商品の変化がよく分かる。14年4~6月期には25%を占めていた食品は、直近の21年4~6期には31%を占めるまでに。金額換算では2908億円から5642億円である。

 デイリー新潮では「マツモトキヨシが限定『ミルキー』チーズケーキ味を出す2つの事情」(20年7月配信)で、そんな“食品スーパー化”するドラッグストア業界の事情を紹介した。売り場面積と設備の点から郊外型のドラッグストアは冷凍食品に力を入れ、逆に都心型の店は菓子などの加工食品に注力する傾向があるようだ。

「しかし各社とも弁当や総菜といった『中食』の分野が弱かった。大量生産でコストを下げられる店舗数、配送、そして“味”につながるノウハウの蓄積からいっても、ドラッグストアはコンビニには勝てないわけです。一方、中食が充実していれば薬品販売より来店頻度が増え、店の売り上げにつながることもあり、課題だったのです。その解決策のひとつに、吉野家の牛丼販売はなり得ます。いまのところは弁当の販売ですが、ウエルシアの店舗には、オリジン弁当の店舗が併設されているところもあります。ゆくゆくはウエルシアと吉野家の看板が並ぶ……なんてこともありえるかもしれませんね」

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