「岡本和真」はスランプ真っただ中、「村上宗隆」とは何が違うのか【柴田勲のセブンアイズ】

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菅野がエース本来の姿を見せれば

 一方、村上は岡本和と正反対である。ボール球に手を出さない。打てる球だけをじっくりと待つ。歩かされても構わない姿勢だ。

 本塁打数は両者ともに38本だが、打点は岡本和が106で村上は102、ついこの間までは岡本和が結構引き離していたはずだ。岡本和の打点王だけは堅いと見ていたが、今後の展開次第ではわからなくなってきた。

 もちろん、岡本和の38本塁打、106打点は立派な数字だ。開幕から不動の4番として打線の中心に座りチームを引っ張ってきた。

 残り15試合だ。もし、岡本和にこの3連戦で3本くらい出て巨人が勝つようなら本物の勢いが生まれる。まあ、これはヤクルトにも言えることで、もし、村上にやはり3本くらい出て巨人を大きく突き放せば勢いに拍車がかかるに違いない。

 野球はやはり4番とエースだ。巨人は岡本和が勝負所で不振に陥り、エースの菅野智之が5勝7敗の成績だ。そりゃ苦しい。その菅野も3連戦に出てくるだろう。岡本和の打棒復活に加えて菅野がエース本来の姿を見せれば最後の最後まで分からなくなる。

「四球を出すくらいなら打たれてこい」

 前回の今コラムで巨人投手陣の四死球数の多さを指摘したが、3日の試合でも残念な四球があった。先発の戸郷翔征は今永昇太に負けず劣らずの投球をしていたが、5回1死一、三塁から投手の今永に四球、それもストレートで与えた。無駄な失点につながってしまった。

 投手が投手に四球を与える。投手に聞くと「投げにくいものなんです……」というがあまりにももったいなかった。たびたび話しているが、とにかく四球は失点に結び付く可能性が非常に高い。川上(哲治)さんは「四球を出すくらいなら打たれてこい」と投手たちに言っていたものだ。

 四球での得点はラッキーだ。私が四球で出塁するとベンチからは必ず「走れ」のサインが出たものである。無駄な四球は絶対にダメである。巨人の投手陣、肝に銘じてもらいたいところだ。

 さて、巨人の坂本勇人が史上最年少の32歳9カ月で史上14人目の通算400二塁打を達成した。素晴らしいことだと思う。左中間、右中間を割り、左翼線、そして右翼線へはじき返す。過去の達成者の顔ぶれを眺めてもいい打者が多い。坂本はまだ若い。二塁打の新記録を作るのではないか。

 5日からの神宮でのヤクルト3連戦、なんとしてでも3連勝して弾みをつけて、12日からの阪神3連戦(東京D)に臨んでほしい。優勝の可能性はまだ残っている。

(成績は4日現在)

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月5日掲載

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