心の病は食事で改善できる? 精神栄養学の第一人者が語る「最強の食事術」

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注目される「DASH食」「地中海食」

 こうしたメカニズムで発症するうつ病を予防し、また症状を改善するにはどのような食事を心がけるべきなのか。そこで今注目されているのが、「DASH食」や「地中海食(地中海式食事)」です。

 前者は過剰なナトリウム(塩化物)を体外に排出する効果のあるミネラルを多く摂取する食事法で、主に大豆、ニンジン、ブロッコリー、アボカド、バナナなどを積極的に食べ、糖質を抑えた低カロリーであることを重視します。そして、私がとりわけ推奨しているのが、後者の地中海食です。

〈1960年代、地中海沿岸諸国での心臓病死亡率が低いことが判明する。

 そして2000年代には、スペインや南イタリア、ギリシャなどの伝統的な食事の減量効果が注目を浴び、欧米で地中海食がブームとなっていった。〉

赤ワインはプラス1点

 飢餓を除いた現代の食事の問題点は、ふたつに大別できます。ひとつは食べすぎ、そしてもうひとつは西洋式食事です。

 日本においては、ダイエットを意識しすぎたせいか女性はむしろ節食傾向にあるので、前者の問題は当てはまりません。一方、後者の問題は該当します。

 西洋式食事とは、いわゆるファストフードに象徴される製品化、精製化された食物です。これにより、冒頭の徳川将軍のような栄養不足に陥りやすくなっている。ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉、ピザやハンバーガー、ビールなどでお腹を満たすのが西洋式食事の典型例です。

 米に限らず、本来であれば果物でも皮ごと食べたほうが栄養を摂れるのですが、現代人は剥いて中身だけ食べる。ぶどうの皮に含まれるポリフェノールは渋く、その他の果物の皮に豊富に含まれるミネラルやビタミンもあまり美味しいものではないので、それを取り除いて美味しい中身だけを食べてしまうわけです。また、味付けを濃くした食品の製品化も進んでいます。

 私たちの身体は、「生の食材」を摂取する前提の遺伝子を有しています。食品の製品化が進んでいるからといって、遺伝子はそれに合わせてすぐに変化するわけではない。したがって、塩分の摂りすぎなどといったアンバランスが生じると、必然的に心身に支障を来してしまうのです。それを解決するのに有効なのが地中海食です。

 地中海食、それは欧米諸国では健康食の代名詞となっています。そのミソは、当たり前でありながら、これまで説明してきたように現代人が忘れがちな、とにかくバランスの良い食事に努めることに尽きます。では、どうやってバランスを保てばよいのか。その参考になるのが、03年にギリシャのアテネ大学などが考案した「地中海式食事スコア」です。

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