総裁選、真の主役は安倍前総理 岸田新総裁も頭が上がらない一人勝ちの大成果とは?

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“安倍怖し”で高市支持

 安倍をかくも突き動かすものは何か? それは「票の掘り起こし」であると私は推測する。安倍は憲法改正や再々登板へ未だに執念を燃やしていると報じられており、それを実現するには、投票してくれる支持者自体を増やすことが最大の鍵となる。ここに、今回の総裁選での高市支持者の積み増し、そして決選投票での岸田勝利の理由が読み解けるのではないか。

 長く続いた安倍政権の下、自民党支持者の中には、党が右傾化すると選挙に行き、左傾化すると棄権する「右派岩盤支持層」が一定数存在する。今回、ネットを中心に発言が活発化した高市支持者がまさにその層である。安倍が率いた前回の総選挙で、自民党の比例代表での得票数は約1800万。このうち、今回の総裁選で高市に入れたような右派岩盤層が、前述の党員党友票のように20%いたと当てはめると、約360万だ。実際はその半分だったとしても180万票で大まかに言って、小選挙区ひとつにつき約5000人。安倍はこの右派層を改めて掘り起こした、というのが私の分析だ。菅政権下で選挙に行かなくなっていた人に、再び投票用紙を握らせることになる。

 まもなく行われる総選挙で、自分の選挙区の情勢がどうも危ない。安倍が入って応援演説をしてくれたら、安倍が掘り起こした支持者によって逆転の可能性が出てくる。このように考えると、自民の議員にとって安倍の応援は喉から手が出るほど欲しい。

 実際に総裁選の最中、「もし河野を支持したら(総選挙で)安倍さんの応援が得られなくなるかもしれない」と言って、高市支持を決めた議員がいた。

 安倍や高市を支持する層を右翼だのネトウヨだのと片付けることは簡単だ。しかし、その層が今後の選挙の帰趨を決める勢力であることは間違いない。それを認めずに安倍支配は悪だとか安倍支配を打倒すると言っても、もはや机上の空論である。アメリカのトランプ前大統領を押し上げたのも、国こそ違え右派熱狂支持層であったことを忘れてはいけない。冷静に分析して選挙戦略を立てなければ、政権交代なんてできっこないということを野党、特に立憲民主党の枝野代表は肝に銘じるべきだ。万年野党の暮らし良さを追求している限り、馬の耳に念仏だろうし、鹿の角を蜂が刺すようなものだろうが。

武田一顕(たけだ・かずあき)
元TBS北京特派員。元TBSラジオ政治記者。国内政治の分析に定評があるほか、フェニックステレビでは中国人識者と中国語で論戦。中国の動向にも詳しい。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月1日掲載

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