間男との現場を目撃しても何も言えず、今度は自分が…浮気性の妻をもった主夫のモヤモヤ

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黙って絨毯を買い替えた

 それでも「何かが足りない」気がしていたと純也さんは言う。それは他の男への嫉妬なのか、あるいは自分勝手に振る舞う聡子さんへの憤りだったのか。

「自分が妻の奔放さを許している器の大きな男であることを、当の妻に認めてほしかったのかもしれません。妻が自宅に男を引き入れていたとわかった直後、些細なことで口げんかをしたんです。僕は何も言わずに翌日、絨毯を買い換えました。妻はちらっと見たけど何も言わなかった。僕が知っているとわかったんだと思います。だけど今思えば、妻は前から自分が浮気していることを僕が察していると、知っていたのかもしれない。もっといえば、浮気をしても僕が怒らないとわかったから結婚した可能性もある」

 その後、聡子さんがしみじみと言ったことがある。「私は純也と一緒にならなかったら、今のような幸せはなかったと思う」と。

 浮気を謝ったわけではない。だがすべてわかっていて、彼女はその言葉を純也さんに言ったのだろう。それでも純也さんのモヤモヤは収まらなかった。

そして純也さんも不倫の道へ…

「別に仕返しをしようという気はありませんでした。ただ、浮気する側の心理ってどういうものなのかは知りたかった。それは潜在意識として深く自分の中にあったんだと思います」

 2年前、仕事関係で三智子さんという20代後半の女性と親しくなった。ふたりで手がけた大きなプロジェクトが終わり、打ち上げをかねて食事をすることになった。純也さんは聡子さんとも相談し、近所のママ友に話して子どもたちを預かってもらうことにした。

「結局、聡子が早めに帰れたので、夕食前に子どもたちを迎えに行けたそうですが、そのころ僕は、三智子さんとふたりきりで食事をしていました。大きな仕事がうまくいった打ち上げだったので、テンションも高くなっていた。いい気持ちで飲んで、彼女も『つい最近、3年つきあっていた彼氏にフラれたばかりなんですよー』とプライベートなことまで話してくれて、すごく楽しかったんですよ。帰り際、ダメ元でホテルに誘ったら、彼女がOKしてくれた」

 あの日のことはよく覚えていないのだけれど、と彼は前置きした。ただ、長年、知らず知らずのうちに自分を抑圧してきたのは確かだったのだろう。一気に解放されたような気分になって、結果、朝帰りとなってしまった。

 帰宅すると、聡子さんが子どもたちの朝食の用意をしているところだった。後ろめたさで口ごもる彼に、「おはよう。楽しんできた?」と聡子さんは声をかけ、「悪いけど出かけるね、今日は朝から会議なのよ」と出て行ってしまった。

 子どもたちも学校へ行き、がらんとした家でひとり、純也さんはソファに座り込んでいた。

「浮気ってこんなに後ろめたいのか、と落ち込んでいました。朝帰りは妻もしたことがないのに、彼女はあんな朗らかに朝帰りの夫を迎えるのか、ということにも驚いたし、浮気している妻のメンタルもわからなくなった」

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