10代で人工肛門になり最新医学で機能を取り戻した医師 大腸がんを早期発見する「観便」を啓蒙

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うんちの判断の仕方

 日本うんこ学会はさまざまな方法で、私たちがもっとうんちに興味を持ち、観便するように働きかけている。石井さんは観便の際のポイントも教えてくれた。

「うんちに黒みや赤みがあれば、血液が混じっています。診察を受けてください。胃がんや大腸がんの可能性があるからです。胃や腸の上のほうに出血があると、黒いうんちになります。肛門近くに出血があると、赤いうんちになります。また、いつもよりもうんちが細くなった場合も、大腸がんの心配があります。潰瘍ができると、腸の管が細くなり、うんちも細くなるからです」

 うんちの色や形はどう判断すればいいのだろう。

「黄土色でバナナのような太いうんちが毎日出れば、申し分ありません。ただし、もちろん個人差があります。必ずしも“理想的なうんち=健康”ではありません。僕はまず自分の平便を知ることを勧めています」

“平便”とは、自分のスタンダードのうんちのことだ。軟らかめのほうが体調のいい人もいれば、硬めがいい人もいる。

「体調のいい時期に1週間くらい観便すると、自分の平便がわかります。その後、観便を続けてください。平便からかけ離れた色や形には気をつけてください」

 多くの人は自分の健康状態の目安として平熱を知っている。そこには個人差がある。35度台の人もいれば、37度台の人もいるだろう。さらに平便も知っていれば、消化器系に問題が起きたとき、身体からの危険信号をキャッチしやすい。

 うんちで苦しむ人を救いたい、という石井さんの思いの強さは半端ではない。この記事をきっかけに、ぜひ今日このときから観便を意識し、実践していただきたい。

 生理現象として、毎日している排泄。水に流した瞬間に忘れてしまううんちには私たちの体のさまざまな情報が含まれている。その情報を逃さないことによって、命が救われることがある。一回一回意識をもって排泄してほしい。

石井洋介(いしいようすけ)
医師。日本うんこ学会会長。株式会社omniheal代表取締役。秋葉原内科saveクリニック共同代表。19歳のときに潰瘍性大腸炎で大腸を摘出。人工肛門の経験を経て医学部を目指す。2010年高知大学医学部をを卒業。2013年に日本うんこ学会を設立し、スマホゲーム「うんコレ」を開発。現在は「おうちの診療所 目黒」を拠点に在宅医療に従事。

神舘和典(こうだてかずのり)
うんちジャーナリスト。著述家。1962年東京都生まれ。音楽をはじめ多くの分野で執筆。共著に『うんちの行方』、他に『墓と葬式の見積りをとってみた』『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』など著書多数(いずれも新潮新書)。

週刊新潮 2021年9月23日号掲載

特集「『うんち』を見れば健康まる分かり 『潰瘍性大腸炎』で腸を失った医師のフン戦記」より

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