ついにメスが入った日大事業部の闇 ターゲットはアメフト“危険タックル問題”で暗躍の理事

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田中理事長の関与

 果たして、日大事業部にからむ不正な金の流れがあったのか? あったとすれば、田中理事長が自らそれに関与し、あるいは容認していたのか? 世間の関心はそこに注がれている。しかし、「危険タックル問題」以降、書面やネットで発信する以外、田中理事長はメディアの質問に一切答えていない。それが「隠蔽」なのか、本当に「語るべき事実がないから」なのか、判断はつかないままだ。

 今回、東京特捜部が捜査に入り、田中理事長も任意聴取を受けた。噂や憶測に過ぎなかったカラクリにメスが入り、不正があれば告発されるだろう。東京地検特捜部の捜査が日大本部だけでなく、日大事業部にも入ったことは、これまで説明した不正な金の流れの解明を予感させる。仮に日大板橋病院の建て替えに関連して背任行為があったとすれば、日大本部が直接企図したものでなく、A理事が関与し、日大事業部を何らかの形で絡ませて不正な資金の還流を作ったという見方が有力だ。捜査がなされた上で田中理事長の関与がなかったと断定されれば、田中理事長の潔白は証明される。

 私は、任意聴取を受けた後、「田中理事長と会った」という日大関係者から話を聞くことができた。その人物は、「田中理事長は、本当に知らないんだと思いますよ」と言い、こう続けた。

「地検に呼ばれたけど、何でオレが設計屋と付き合うんだ? 何を聞かれたって、知らないものは知らないんだから答えようがない。そう言っていました」

 その人物によれば、A理事らが田中理事長の威光を借りて、田中理事長には内緒で悪事を働いていたのではないか、という。その格好の隠れ蓑にされたのが日大事業部だ。

「田中理事長は、日大事業部は大学にとって有益な組織だといまも信じていると思います」

 まさかその日大事業部が裏側で不正な資金を生み出す道具にされているとは思ってもいないだろうと、その証言者は言う。すべては、田中理事長の威光を盾に、A理事と心無い仲間たちが私腹を肥やすために作った構造なのか。危険タックル問題で浮上した日大事業部の黒い金の疑惑にも田中理事長は絡んでいなかったのか。だから、沈黙を守る以外に方法がなかったのか。その全容が、今回の背任事件で明らかになるよう期待する。

小林信也(こばやし・のぶや)
1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。「ナンバー」編集部等を経て独立。『長島茂雄 夢をかなえたホームラン』『高校野球が危ない!』など著書多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年9月19日掲載

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