山口組は「公共の場で銃使うな」と指示 ならばヤクザはどんな武器を使うのか

国内 社会 2021年9月12日掲載

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“テロ”に使われたドス

 とはいえ、暴力団が活動を続けるのであれば、他組織との“抗争”が起きるリスクは常に存在する。「拳銃を使いません」などと宣言すれば、敵対する組織から馬鹿にされないのだろうか?

「抗争になると判断すれば、暴力団はどんな手段を使っても勝利しようとします。そして、下手な拳銃より、ドスのほうがよほど効果的だということです」(同・藤原氏)

 ドスとは短刀の俗称で、一般的には長さ一尺(約30・3センチ)以下の刃物というのが定義だ。素人には「拳銃より威力がある」と言われても信じられないが、その殺害能力は極めて高いという。

 暴力団の犯行ではないが、ドスの威力を鮮明に示した殺人事件がある。「浅沼稲次郎暗殺事件」だ。

 1960年、日本社会党の委員長・浅沼稲次郎(1898〜1960)を、大東文化大学の聴講生で右翼組織「大日本愛国党」の活動家としての経歴もあった山口二矢(1943〜1960)が、刃物を使って刺殺したテロ事件だ。

拳銃の欠点

 山口が使った凶器は、刃渡り約33センチの短刀。ドスより少し長い。山口は演説が行われていたステージに駆け上がり、衝突するように浅沼の腹部に突き刺した。

 刃渡り30センチの刃が肉体を刺せば、そのダメージは極めて大きい。浅沼は背骨前の大動脈が切断された。大量出血とならなかったのは、浅沼が肥満体であり、傷口が脂肪で塞がれたためだったという。実質的に浅沼は即死に近い状態だった。

「更に拳銃は、暴力団の幹部にとって頭の痛い問題もあります。命中率が極めて低く、巻き添えのリスクがあるということです」(同・藤原氏)

 1995年、山口組と会津小鉄会系の抗争が起きていた際、警備中だった京都府警の巡査部長が山口組組員に誤射されて死亡した。2003年、最高裁は山口組トップの「使用者責任」を認め、8000万円の賠償が確定した。

 これをきっかけに、組の抗争で巻き添えとなった死亡者の遺族が、組トップの使用者責任を求めて訴訟を起こし、勝訴が相次いだ。

「狙う相手に弾を命中させるのは、実は大変に難しいのです。当時だから民事訴訟で済みましたが、今なら暴力団トップの刑事責任が問われる可能性は高いでしょう」(同・藤原氏)

暴力団の“変質”

 ドスを相手の懐深くに刺すことができれば、“巻き添え”のリスクは大幅に減少する。

「実は、これまでの“抗争”でも、ドスは重要な凶器として重宝されてきました。具体的には、まずドスで相手の動きを止め、拳銃を使ってトドメを刺すという殺傷方法もあるほどです」(同・藤原氏)

 暴力団が「あいつを殺す」と決断したなら、最終的には工藤会の判例など関係ないという。

「組が殺人を決断したなら、拳銃も使うでしょう。ただ、その後の対応が違ってきます。以前は警察との関係から、実行犯を逮捕させることもありました。しかし、野村被告に死刑判決が下ったことで、抗争が起きて相手を殺せば、暴力団は実行犯を本気で逃がそうとするでしょう。地下に匿ったり、海外へ逃がしたり、ありとあらゆる手を使うはずです」(同・藤原氏)

デイリー新潮取材班

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