松山英樹、プレーオフ最終戦30人中26位でも8年連続出場は「とんでもなくすごい」

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「僕もあそこに入りたい!」

 さて、8年連続となった松山自身のツアー選手権出場の歴史をあらためて振り返ってみると、そこには彼の進化が垣間見える。

 初出場した2014年は22位に終わり、当時は

「やってやろうという気持ちは強かったけど、気持ちと体の状態に対して技術が伴わなかった」

 と、自身のゴルフそのものの未熟さを痛感させられた様子だった。

 2度目となった翌2015年、松山は12位タイでフィニッシュ。優勝したのはジョーダン・スピースだった。そして、その年の全米プロを制して世界ランキング1位になったオーストラリアのジェイソン・デイは、会見でこう言った。

「今のゴルフ界はすばらしい。ジョーダン・スピース、リッキー・ファウラー、ダニー・リー、それにヒデキ・マツヤマもいる」

 それを松山に伝えると、「何で僕の名前まで言ってくれるんだろう?」と首を傾げ、「でも、僕もあそこに入りたい!」と世界の上位陣たちを見上げていた。

 あのとき松山が「あそこ」と呼んでいた向こう側の上位陣たちは、その後、みなスランプや成績下降に陥り、今年のツアー選手権に出ていたのはスピースだけだった。そのスピースもスランプからカムバックしたばかりで、連続出場はできていない。

 一方で松山は、2017年から今年まで「勝てなかった4年間」こそ経験したものの、安定してポイントランク上位30位に毎年食い込み、今年はマスターズを制覇して、かつては彼が「あそこ」と呼んでいた名実ともに世界のトップグループ入りを果たした。

 その頑張りと功績は、もっと高く評価されて然るべきだ。

「すごいぞ、松山英樹!」

 声を大にして賞賛したい。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮取材班編集

2021年9月7日掲載

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