精神科医が教えるコロナ禍の「ストレスフリー」実践法 パフォーマンスを維持するスキルとは

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「心の分断」とどう向き合う?

 こうした分断をストレスに変えないためには、いま自分にできること・できないことに分けて考えること。紙に書き出してみてもいいと思いますが、自分でできることについては行動に移す。できないことは手放す。これでずいぶん楽になります。

 親御さんがワクチンを打たないという話についても、「ワクチンを打つべきだ」と諭すのではなく、ワクチンの有用性を示すデータを見せるとか、事実に基づいた情報を渡すだけにとどめ、決断は委ねる。これであなたのストレスは大幅に減るはずです。

〈新型コロナウイルスは、私たちにさまざまな変化を強要し、その変化は、さまざまなストレスを生んでいる。ここまでストレスを受け流す方法について聞いてきたが、ストレスフリーな生活、心の健康を保って生活するためには、「体の健康」こそが重要なのだという。〉

「コロナ太り」というのがありますよね。あれは、ストレスが原因です。ストレスを感じると、さまざまなストレスホルモンが分泌されます。そのうちの一つであるコルチゾールは、免疫抑制剤として内科の治療にも使われますが、患者さんが「胃の底が抜けたのかと思った」というほどの食欲増進効果があります。ストレスで太るというのは科学的に正しいんですね。

 生物にとって極度のストレス状態は、外敵に襲われることと飢餓の二つです。大きなストレスがかかると、身体は飢餓状態と同じ反応、つまり、代謝が減り、エネルギーを脂肪として蓄えます。コルチゾールを減らすために有効な手段は運動なので、体を動かす機会の減ったコロナ禍にストレスで太るのは当然です。

 コロナ太りの解消にお勧めするのは、朝の散歩です。在宅勤務で通勤が減った、なくなった人は、通勤時間に合わせて5~15分でいいので散歩をする。

 朝散歩は、朝日を浴びることで、体内時計がリセットされるほか、セロトニンが活性化し、起き抜けのボーッとした状態をすっきりさせてくれるうえ、免疫機能を向上させるビタミンDが生成されるなど、多くのメリットがあります。

 もう一つ、朝にきっちり体内時計をリセットすると、15時間後にしっかり眠気が出て寝付きがよくなります。睡眠も、ストレスフリーな生活の重要な要素です。

 実はうつ病になる人のほとんどが睡眠障害に悩まされています。睡眠は、脳と体の両方の疲れをとってくれるとてもありがたいものなので、いい睡眠を取ることは、心の健康を保つことにもつながります。

 仕事とプライベート、休憩をきっちり分けるスケジューリングが重要という話をしましたが、スマホが原因で不眠になる人も多くいます。ブルーライトは感受性の差が大きいという説もありますが、青色光線が脳の刺激になって目が冴えてしまう。また、テレビやニュースを寝る直前に見てしまうと、それに興奮したり、憤りを感じたりして脳が活発化してしまうこともあり得ます。

 コロナ禍で、精神科医としてお勧めしたいのは、質の高い「睡眠」を十分に取ること、「朝散歩」などの運動を意識的に生活に取り入れること、そして、困ったときに相談できる友達と、リアルなコミュニケーションを取って「ガス抜き」をすること。

 冒頭に述べたように、ストレスはゼロにはできませんし、する必要もありません。長引くコロナ禍での生活から生まれるストレスをいかに受け流して、快適に暮らすかが重要です。

 ストレスから体の不調を感じている人は早めに専門の病院で診察を受けることをお勧めしますが、普段の生活に、睡眠・朝散歩・ガス抜きを取り入れ、ストレスフリーな生活を心がけることで、あなたの心はずいぶん楽になるはずです。

【構成・大塚一樹】

樺沢紫苑(かばさわしおん)
精神科医。1965年札幌生まれ。札幌医大卒。Youtubeチャンネルやメルマガで精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える精神科医として活動している。シリーズ70万部『学びを結果に変える アウトプット大全』をはじめ『読んだら忘れない読書術』など著書多数。

週刊新潮 2021年9月2日号掲載

特集「疫病禍の心身サバイバル 緊張ゼロは体に悪い『ストレスフリー』の正しい実践法」より

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