塾講師からライターに転身した石原たきびさん 人生の転機になった瞬間とは

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スパルタ教育への疑問から転職

 最終的には仕事が面白くなり、週5日のフル出勤に変えてもらう。ここで働いたのは4年間。それなりに充実していて、生徒たちとの触れ合いも楽しかった。しかし、これ以上成績を上げるためには「スパルタ」でやるしかないと気付く。それは嫌だった。なんというか、人間同士の交流を持ち続けたかったのかもしれない。

 こうして辞める決意をした僕は、もともとやりたかった出版業界の求人を探す。うまくマッチしたのがリクルートの住宅情報編集部(現・SUUMO)。そこから紆余曲折を経て、フリーランスのライターになった。あのときの決断が、まさに人生の転換点。SUUMOとは今でも仕事をしている。

 塾講師時代の主任は田中先生という男性で、個人的な付き合いは生まれなかった。しかし、「色白なのが嫌で自転車通勤の際は、なるべく日向を走っています」というような、ちょっと面白い人だった。往年のサッカー選手、ストイコビッチに似ていた。20年以上も前の話ではあるが、あのセリフはときどき思い出す。

 なお、毎日のように付けていた俳句ノートは数十冊に達したが、何度目かの引越しの際に勢いで捨てた。とくに未練はありません。

石原たきび(いしはら・たきび)
1970年、岐阜県生まれ。ライター。編著に『酔って記憶をなくします』(新潮社)など。

2021年8月28日掲載

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