自宅療養の「コロナ患者」急増で医師会の尻に火 全国ベースの見守り体制を実現するには

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限りある医療を効率的・効果的に

 政府は8月17日、新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言の対象地域を13都府県に拡大し、期間を9月12日まで延長する方針を決定した。ワクチン接種が進んでいるものの、デルタ株による感染急拡大に歯止めがかからない状況が続いている。

 重症者数が直近1ヵ月で約4倍に増加し、連日のように過去最高を更新している。第5波ではワクチン接種が進んでいない40~50歳代の重症化が急増しており、医療現場はこれまでに経験したことがない緊張感に包まれているという。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は「東京都における人流を5割減少すべき」と提言したが、かけ声だけでは実効性はもはや上がらなくなっている。

 東京都の医療関係者が「制御不能となり、もはや災害時の状況に近い局面を迎えている」として、「医療の逼迫で多くの命が救えなくなる」という強い危機感を示したのに対し、「責任を放棄するな」などの批判が寄せられているが、筆者は「現状を災害と捉え、災害医療の中で日本がこれまで積み重ねてきた知見をコロナ対策に取り入れれば、事態の打開が図られるのではないか」と考えている。

 災害医療とは、地震や豪雨、大規模事故などの発生で、対応できる医療能力をはるかに超える医療対象者が生じた際に行われる急性期・初期医療のことである。災害の現場では、1人の患者にかける医療の質よりも、「いかに多数の患者に対して、限りある医療を効率的・効果的に提供できるか」が要求される。

 日本のコロナ対策はこれまで平時の発想の下、新興感染症に対応できる少数の医療従事者に過重な負担がかかってきたが、災害医療となれば、あらかじめ指定された拠点病院だけではなく、感染症などの専門知識が乏しい開業医などで組織される医師会も応急措置に参加するのが当然の義務ということになる。「災害医療へのモードチェンジ」とは明言していないが、東京都では医師会が自宅療養者を支援することになり、これまで関与が乏しかった開業医らにも協力要請が出された。

 これは、新型コロナウイルス感染が判明しても保健所からの健康観察などの連絡がなかなか届かないため、「病状がいつ急変するかわからない」との不安が広がっていることへの対応が狙いである。これまで「対岸の火事」だった医師会の尻にも、ついに火が付いた形だ。

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