「お役御免になった」のネイティブな表現は? 在米医師が教える生きた英語

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 コロンビア大学医学部外科教授であり、ニューヨークのトップドクターとして知られる加藤友朗医師。『ネイティブを動かすプレミアム英会話50』(新潮社)の著者でもある加藤氏が日常で出会う“ネイティブ英語”を紹介。

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 このコラムの表現は「ネイティブが使う」と便宜的に言っていますが、実際にはネイティブ・スピーカーでなくともビジネスや一般の会話で使う英語の表現を紹介しているのだと、前回書きました。日本語で「奥歯に物が挟まったような話し方」という言い方がありますが、その意味は「何かを隠しているような話し方」ということです。もちろん後者のままでもきちんと伝わるので、日本語として全く問題ないわけですが、「奥歯に物が挟まったような話し方」という言い方でないと伝わらないものがある気がしませんか。このコラムで扱っている表現は主にそういうものだと思ってください。

 さて今回の表現はon the hook/off the hook。直訳では「フックにかかる・フックから外れる」ということです。ここでのフックはコートなどをかけるフックと考えていただいてもいいですが、どちらかといえば釣り針の意味です。釣り針に引っかかったままの魚と釣り針から逃げた魚。on the hookは何かしらの状況やトラブルに縛られた状態、off the hookはそこから脱した状態ということになります。漫画でジェシカが言っているのは、キャサリンがアジェンダを用意すると言ったので自分はお役御免になったと思っていたということです。

 on the hook/off the hookの使い方の例は“Be careful. Once you sign the document, you are on the hook.”「気をつけて。いったん書類にサインをすると責任があることになるよ」や、“The prosecutors dropped all the charges against him, so he is off the hook.”「検察が訴えを取り下げたので彼は解放された」などです。

 では練習問題です。(答えは下)

1.日本語に訳すと?

“That terrible deal has left our company on the hook for nearly a billion.”

2.off the hookを使って英語で言うと?

「ボスが僕の代わりに発表することに決めた。だから僕はお役御免だ」

加藤友朗(かとうともあき)
コロンビア大学医学部外科教授。東京大学薬学部、大阪大学医学部を卒業後渡米。世界初の多臓器摘出体外腫瘍切除手術を成功させ、ニューヨークのトップドクターとして世界中から集まる患者の命を救う。『ネイティブを動かすプレミアム英会話50』(新潮社)が発売中。

週刊新潮 2021年8月5日号掲載

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