フランス人はワクチン義務化に猛反発 欧米では低い接種完了率にマクロンの焦り

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現場からも困惑

 日を追うごとに、反対派の勢いがエスカレートしてきている印象です。デモやネット上の批判にとどまらず、ワクチンセンターやワクチンを推進する政治家の事務所のドアなどが破壊されたり、市庁舎にかけられた大統領の肖像画がはずされたり、デモを取材したジャーナリストが参加者に罵倒され追いかけられ、殴られそうになるといった事件も起きました(BFMという、大統領寄りメディアだと勘違いされたようです)。

 リサーチ機関IFOPのアンケートによると35%のフランス人はこの法案に反対するデモを支持する、同情すると回答していて、IFOPは「デモを行っている層は(政権が当初言っていたような)無視できるマイノリティではなく、きちんと向き合わないといけない存在」としています。これを受けてかマクロン大統領は、「ワクチンを打たないことは自由ではなく無責任」としつつも、「私たちは(法案反対派と)議論する準備がある」と発言しました。

 反対までとはいわなくても、困惑の声はメディアでも取り上げられていました。

 飲食店経営者からは「来店者すべての衛生パスをチェックするのは簡単ではないし、ワクチン接種を完了していない従業員に接客させられないと、ただでさえ人員不足なのにますます採用が難しくなる」という不安の声が上がっています。フランスの鉄道会社SNCFは、乗客の衛生パスを確認するために「長距離電車の出発は1時間以上遅延し、さらに発車数を減便する必要がある」と発表するなど、衛生パスの導入に協力的であっても、クリアしなければならない課題が多いと訴えています。

 私の周りのワクチン接種済みの人に話を聞くと、「感染拡大防止のために当然」という人から「仕事の関係で半ば強制的に」と理由は様々ですが、ワクチン慎重派であっても、他人に感染させてはいけないから、外出制限よりましだから、という理由で打っている人が多いようです。

 コロナウイルス対応を巡っては「マスクをする意味がない」などと主張した初期の対応から批判が多かったマクロン政権。次期大統領選挙にも影響が出るという意見も増えています。今後の対応によりさらに批判が増える可能性もあります。

ヴェイサードゆうこ
翻訳家・ジャーナリスト。青山学院大学国際政治経済学部卒。ITベンチャーから転身し、女性向けweb媒体のライター、飲食専門誌の編集記者として執筆。2016年よりフランスに移住し、現在はYouTubeで現地情報を発信中(http://bit.ly/2uQlngQ)。

デイリー新潮取材班編集

2021年8月4日掲載

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