「森元首相を名誉最高顧問に」案が浮上で「どうして森さんはそこまで評価されるのか?」

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「辞めればただの人」なのに

 今年2月にいわゆる「女性蔑視発言」問題で五輪組織委員会の委員長職を辞任した森喜朗元首相を名誉最高顧問に就ける案が浮上しているという。開幕直前に開会式関係者の辞任や解任が相次いだなか、また1つドタバタが加わった印象だが、そもそもなぜ森元首相はここまで評価され、処遇されるのか?

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 朝日新聞デジタル(23日)は、【森元首相に「名誉最高顧問」就任案 五輪組織委が検討】というタイトルで、こう報じた。

〈東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会が、前会長の森喜朗元首相を「名誉最高顧問」に就ける案を検討していることが分かった。大会開催に果たした功績や、期間中の海外要人の接遇役も念頭に置いたものという〉

〈森氏が2014年から今年2月まで組織委会長を務めた功績を踏まえ、安倍晋三前首相と同じ組織委の「名誉最高顧問」としたい考えで(中略)組織委幹部は「安倍氏と同じような肩書にどこかで就いてほしいと思っている。ここまでやってくださった方。処遇しないとならない」と話した〉

 森氏が政界を去ったのは2012年。「辞めればただの人」と言われるのがほとんどの国会議員の中で、こんなに毀誉褒貶あるのに「ここまでやってくださった方」と言われる例は稀有なことだろう。それは首相経験者でも変わらないはずだ。

政治部デスクによると、

「そうですね。このニュースの組織委幹部の言葉は本音が出ているなぁと思いました」

反省しない人、学習しない

 デスクが続ける。

「組織委としては、招致活動も含めて森さんに頼ってきた部分が相当あるという認識のようです。IOCに限りませんが、国際的な機関や組織は魑魅魍魎みたいなところで、交渉していても何が出てくるのか予想できない部分ばかりです。びくついていたら足元を見られるし、居丈高だと相手にされない。森さんはそういう相手にもひるまずズカズカと懐に入っていき、それでいて相手を嫌な気持ちにさせないという”特殊能力”があり、交渉相手もそれなりの敬意をもって接していたのだと思います」

 その意味で、余人をもって代えがたいという評価が関係者にはあるのだろう。

「実際そうだったようですね。後任の橋本さん(聖子前五輪相)は全くといってよいほど機能していません。菅首相も安倍前首相のレガシーを受け継いだだけで、森さんがうまく方向づけてくれるだろうからと安心していたところ、突如辞任となってしまった。結果、菅首相がさまざまな局面で、矢面に立たされることになったわけですが、そのことはかなり計算外だったようです。五輪中止を求める世論の矛先は、菅首相の言葉足らずの説明やワクチンに関する失政に向かい続けていましたから」

 話を森氏に戻すと、組織委周辺の高い評価とは裏腹に、世間では「老害」「時代遅れ」などといった声も少なくない。

「世間的な見え方が全然よくないのは事実ですよね。大事な時にミスをするし、脇が甘いと言わざるを得ません。今年2月の『女性蔑視発言』騒動もそうでした。思えば首相在任中も、えひめ丸がオアフ島沖で原子力潜水艦と衝突・沈没したという一報が入ったのにゴルフ場に居続けたことや、『神の国』発言が批判されました。本人には言い分もあるのですが、たびたび舌禍や振舞いが批判されてきました。結果として、何か”事件”が起きるたびに過去の出来事が蒸し返され、反省しない人、学習能力がない人という風に見る向きがいるのは事実でしょう」

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