事件現場清掃人は見た 認知症「70代女性」のゴミ屋敷で踏んでしまったヤバいモノ

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 孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、あるゴミ屋敷でのトラウマについて聞いた。

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 これまで3000件以上の特殊清掃を行ってきた高江洲氏は、この業界の大ベテランである。だが、二度と経験したくない現場があるという。

「その現場は、北九州市にある大きな一軒家でした」

 と語るのは、高江洲氏。

「70代の女性が一人で暮らしていました。かなり前から認知症を発症していて、身の回りのことが全くできなくなり典型的なゴミ屋敷となっていたのです」

「プチャ」

 女性は3匹の猫を飼っていた。

「ゴミで戸口や窓がふさがれてしまい、女性や猫は家から簡単に出入りすることができなくなったそうです。見かねた近所の人が市役所に相談し、女性は養護施設に入ることになりました。猫たちは、家の中に閉じ込められたままでした」

 役場の依頼を受けて高江洲氏が家に入ると、3匹の餓死した猫がゴミの中に埋もれていたという。

「家の中では、猫の死臭が鼻につくことはありませんでした。そのかわり掃除を怠っているペットショップのような、アンモニアが混じった臭いが襲いかかってきました」

 まるで洞窟探検するかのように、高江洲氏はゴミの山をかき分けながら進んだ。

「ようやく部屋の中心部まで到達すると、そこには何年も敷きっぱなしになっていたと思われる蒲団がありました。靴を履いたまま蒲団の上を歩くなんていうことは、普通の人なら経験することはありませんが、私の場合はいつものことです」

 蒲団は、湿気や女性の汗、脂をたっぷり吸いこんでいた。

「ぬるりと、靴が吸い込まれていくような、なんとも言えない感触が残りました」

 すると、「プチャ」という嫌な音がして、高江洲氏は思わず飛び上がりそうになったという。

「私は、蒲団の近くにあったハエのサナギをうっかり踏んでしまったのです。現場には、女性が壁に投げつけたらしい糞便もありました。しかし、気持ちの悪い蒲団も糞便も、これを踏むよりはマシでした」

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